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【上級編第1回】HLB値の利用方法

1.はじめに

乳化剤はその名の示す「乳化」に使用されることはもちろんですが、その他にも分散、起泡、消泡、湿潤、油脂・デンプン・タンパク質の改質の目的で広く加工食品に利用されています。そんな乳化剤ですが、食品開発に携わる方にとっては、その汎用性にも関わらず、使いこなしが難しいものと考えられがちです。それは乳化剤の種類が非常に多く、また選択の基準が分からない、また乳化剤の組み合わせで効果が変わることが往々にあり、その組み合わせの最適解を求めるのが難しい・・・などの理由からではないでしょうか?このように使いこなしが難しいとされる乳化剤だからこそ、こうした障壁となる事例に対し、少しでも解決のヒントや情報となるものを発信できればと考えました。そこで上級編と題して、より深い情報の配信を予定しております。第1回目は、乳化剤の選定の物差しともなるHLB値の利用方法についてお送りします。

2.HLB値とは

HLBとはHydrophile Lipophile Balanceの略で、乳化剤の疎水性と親水性のバランスを表す数値であり、この概念はGriffinによって提唱されたものです。HLB値は、親水基を持たないパラフィンなどをHLB=0、疎水基を持たず親水基だけを持つポリエチレングリコールのような物質をHLB=20とします。1つの分子内に親水基と疎水基を併せ持つ乳化剤はその間の数値を取ることになります。乳化剤は疎水基部分の疎水性に対して、親水基の親水性が大きければ大きいほどHLB値が大きく、水に溶けやすい性質となり、逆の場合は水に溶けにくい性質となるのです(図1)。

HLB値とは

図1

3.HLB値の算出方法

HLB値は各種の乳化剤について、その乳化力を比較して実験的に定められるものですが、簡易的に計算によって算出することが可能です。Griffin、川上、Davies、小田らによって数々の算出式が提唱されております。HLB値の算出方法の代表的なものを式1に示します。

HLB値の算出方法

式1

4.HLB値による乳化剤の選択

使用する目的に合った乳化剤を数多くの中から選択する場合、先例や経験とともに乳化剤のHLB値が参考となります。表1をご覧下さい。このように消泡やW/O乳化の目的であれば、低HLBのものが適し、洗浄や起泡、さらに可溶化には高HLBのものを選択する必要があります。

HLB値による乳化剤の選択

表1

しかし、HLB値はおおよその目安と考えるべきです。実際の系では様々な要素があり、HLBだけで選択できるものではありません。水中油型(O/W)乳化系を例にとりましょう。上表ではO/W乳化はHLB=8~18の乳化剤が適するとありますが、そもそもHLB値の幅が広く、多くの乳化剤が該当してしまいます。そこで参考になるのが油の所要HLBです。

5.油の所要HLB

油の種類に依存して乳化に最適な乳化剤のHLB値は大きく異なってきます。この値を油の所要HLBといいます。従って、所要HLBが既知の油を乳化する場合には、乳化剤のHLB値が所要HLBに近いものを選択することが第1ステップとなります。表2は代表的な油剤の所要HLBをまとめたものです。例えばある乳化食品の油種を変えたいとした際に、油の所要HLBを比較し、次いでHLBを目安に乳化剤を代えるのにも参考となります。
なお、所要HLBの求め方としては、1)乳化実験より求める、2)既存データを利用する、などがあります。

油の所要HLB

表2

6.乳化剤の加成性

引き続きO/W乳化について考えましょう。経験的にも1種類の乳化剤を使用した場合よりも、HLB値の異なる乳化剤を複数併用した場合の方が乳化安定性に優れていることが多いのです。これは図2のように併用した方が界面膜に並ぶ乳化剤密度が増すからと考えられます。

乳化剤の加成性

図2

上述のように複数の乳化剤を併用する場合、式2のように単純な計算式のように個々の乳化剤のHLB値と配合比から混合HLB値を求めることができます。HLB値の異なる二種類の乳化剤の配合組成を変化させることで、二種類の単独HLB値間の任意のHLB値の乳化剤を調製することができるのです。

乳化剤の加成性

式2

7.結び

今回はHLB値に着目して少し掘り下げた情報をお送りしました。皆様の乳化剤選びの一助となれば幸いです。
なお次回以降の配信では、乳化剤使用において落とし穴になることもある「使用温度」や多価アルコールなど共存物質が及ぼす影響などについて配信を予定しております。

(2016年8月)

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