Vol.2 風味はバランスが重要
執筆:羽木 貴志(おいしさ科学館館長)
味と香りを合わせて風味と呼ばれますが、風味が異なるということは、味や香りに関与する成分の含量が異なることに原因があります。これらの成分は各種のクロマトグラフで成分を分離定量しますが、分析結果からの判断上重要なポイントは2つあります。
1.多く含まれている成分の影響が大きいとは限らない。
微量でもキツイ風味成分もあれば、多量に含まれていても非常に弱い成分も存在します。個々の成分の閾値(人が感じる最低濃度)が異なるためです。
2.風味は成分バランスが変わると大きく変わる。
一つの成分が多い少ないではなく、味も香りも含まれる成分のバランスが少し変わると大きく違って感じます。人は風味をバラバラに感じるのではなく、一度に感じるためかと思われます。
味のバランスは、の7つの基本味【5味(甘味、酸味、塩味、苦味、旨味)+刺激味(辛味、渋味)】の強い・弱いで表現できますが、香りとなるとその評価用語は、○○のような香りが強いなど比喩表現が基本となるので、その評価が一段と難しくなります。おいしさ科学館では、香りのバランスの評価について、ニオイセンサを用いて検討しております。
下の図は、緑茶の香りの分析例で、○○のような香りとして、玉露、ほうじ茶、煎茶、番茶を指標にして分析しました。分析サンプル(試料1)は、香りの強さは煎茶、質感はほうじ茶に似ていると一目で香りのバランスがわかります。
誰でもわかりやすいデータがおいしさをうまく伝える方法と考え、よりわかりやすいデータ作りをおいしさ科学館は目指します。