Vol.9 おいしさの表現?言葉の"壁"を超えて
執筆:山口 裕章(おいしさ科学館館長)
おいしさの表現 ~言葉の"壁"を越えて~
"おいしさ"の感じ方は、人によって異なります。人それぞれの食習慣、年代、性別、地域など、様々な要素で"おいしさ"が異なります。ご承知のとおり、関東の方がおいしいと思う麺つゆと、関西の方がおいしいと思う麺つゆは、その風味が大きく異なっています。このような地域による食文化の違いは、国単位になると更に大きな嗜好の差として認められます。
缶コーヒーのにおいを例にとってみてみましょう。
日本の缶コーヒーは、コーヒーのトップ香が強く、中国の缶コーヒーは比較的焙煎臭が強いと言われるように、やはり国ごとににおいの違いがあります。
下の図は、日本、中国、台湾、タイの缶コーヒーについて、においセンサーで得られたデータを主成分分析により2次元にマッピングし、官能評価をして図の軸の意味づけをしたものです。国ごとに集団を形成していることがわかります。
食品を海外展開する際に、その地域に応じたおいしさを作り上げていくことが重要になります。私たち日本人がおいしいと思うものが、そのまま海外の人々が、おいしいと思うわけではありません。
更に食文化の違いにより、おいしさを表現する言葉の数や意味も異なることが多く、言葉でおいしさを共有することが困難な場面も出てきます。
そのような時に、誰もがわかるような図で相互においしさを理解できれば、海外向けの商品開発の方向性を示唆できるのではないでしょうか。