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Vol.10 おいしさの表現?言葉の"壁"を越えて(続編)

執筆:山口 裕章(おいしさ科学館館長)

Vol.10 おいしさの表現?言葉の"壁"を越えて(続編)

前回のコラムでは、海外向けの商品開発の一助として、海外の缶コーヒーのにおいマップをお示ししました。一方で、皆様ご承知の通り、おいしさはにおいだけで構成されているわけではありません。通常は、人の五感に加え、経験・記憶、感情など全てを使っておいしさを評価します。今回は、におい、味覚、食感を合わせたマッピングの例を紹介いたします。

さて海外の缶コーヒーを例にとってみましょう。

日本、台湾の缶コーヒーは中国の缶コーヒーと比し、苦味が強い傾向にあるようで、味覚についても国ごとの特徴があるようです。また、飲料の粘性は飲んだときの食感に関わってきますが、日本の缶コーヒーは粘度が低く比較的さらっとしています。

下の図は、日本、中国、台湾の缶コーヒーについて、におい(強さ)、味覚(苦味)、食感(のど越しの粘度)を3次元にマッピングしたものです。ここに示したにおいの強さは、前回コラムで示した図の横軸を用い、苦味は味覚センサー、のど越しで感じる粘度は動的粘弾性測定装置を用いて測定した数値を用いました。

ご覧いただきましたとおり、日本の缶コーヒーが他国と比べて特徴的なポジションにあることが一目でわかります。このように、におい、味覚、食感の統合マップを作成することで、国ごとの違いがより明確にわかります。

国内人口の減少・世界人口の増加に伴い、食品の海外展開が今後加速していくものと思われます。その際に、現地で好まれている食品のおいしさを評価することがあります。 しかし、普段食べ慣れていない海外の食品については、日本人が経験したことのない風味に接することも多く、官能評価による言葉出しが極めて難しい場合があります。今後益々、言葉の壁を越えたおいしさの見える化が必要になっていくのではないでしょうか。

Vol.10 おいしさの表現?言葉の"壁"を越えて(続編)

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