Vol.11 売れ筋商品のおいしさを可視化
執筆:山口 裕章(おいしさ科学館館長)
"おいしさ"の感じ方は人によって異なりますが、機器分析を用いることで誰もがわかるような図で相互においしさを理解することができる例をVol.9で紹介しました。このように機器分析で得られた図やグラフは、人によらない客観的なデータとして商品開発の方向性を示唆するのに有用であると考えますが、企業にとって実際はどのような"おいしさ"が売れ筋なのかとても気になるところです。
そこで、今回も缶コーヒーの例をとってみましょう。下の図は、日本国内のレギュラー系缶コーヒーについて、においセンサー・味覚センサーで得られたデータを主成分分析により2次元にマッピングし、そこに飲料雑誌などに掲載された販売数量を重ね合わせてみたものです。統計解析ソフトにより販売数量が多いエリア(赤)~少ないエリア(青)まで等高線グラフで示しております。これによって、売れ筋の風味の傾向を示唆できる可能性があると考えます。
勿論、POSデータなどの売上データを重ねることも可能です。
嗜好調査データを重ね合わせることも可能です。
"おいしさ"は人によって異なるわけですから、究極的には人それぞれの"おいしさ"に合わせた商品があれば素晴らしいと思いますが、一人一人の嗜好に合わせるなどとてもできるものではありません。しかし、嗜好調査との重ね合わせにより、例えば関東の男性が好むにおい、20代女性が好む味・・・といったターゲットごとの嗜好の方向性が示唆できるのではないでしょうか。人それぞれに合わせた"おいしさ"~もしかすると未来の食品産業のあり方なのかもしれません。