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食品の酸化防止講座 食品の酸化防止講座 食品の酸化防止講座

第2回「食品成分は酸化でどうなる?」

酸化劣化を生じやすい食品成分

実際に酸化が進んだ食品はどの様な状態になっているのでしょうか。特に酸化劣化を生じやすい食品成分として、脂質やタンパク質、アミノ酸、フレーバー成分、色素成分などが挙げられます。成分ごとのその酸化のメカニズムを見てみましょう。

脂質

脂質

脂質が酸化した場合では、まず脂質ヒドロペルオキシドと呼ばれる一次酸化物が食品中に発生します。この一次酸化物量は過酸化物価として数字で表され、例えば即席めん類では過酸化物価が30を超えてはならないと食品衛生法で定められています。さらに、この一次酸化物は酸化的分解が進行することでアルデヒド類、ケトン類、アルコール類、酸類などの二次酸化物となります。これら二次酸化物はそれぞれ特有の臭いや味を持ち、二次酸化物の発生は食品の風味に大きな影響をもたらします。

アミノ酸

アミノ酸

アミノ酸では、含硫アミノ酸と呼ばれるシステインやメチオニンなどが特に酸化劣化しやすい成分として知られています。これらアミノ酸は酸化により特定悪臭物質にも指定されているジメチルジスルフィドや、ジメチルトリスルフィド、メチオナールといった刺激性のある硫黄化合物を発生させます。硫黄化合物はごく微量であっても悪臭となりやすく、大きな問題となる場合があります。

色素成分

色素成分

食品の彩りに重要な色素成分もまた、酸化劣化の影響を受けやすい成分です。色素成分の種類によっても傾向は異なりますが、緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンや、トマト色素のリコピン、オレンジなどに多いβ-クリプトキサンチンなど、カロテノイド系の色素では光によって酸化分解、退色しやすい性質があります。また、色素成分の一部は後述する光増感物質となる場合があることも、酸化劣化を生じやすい要因の一つです。

フレーバー成分

食品の香りを特徴付けるフレーバー成分にも、酸化劣化を生じやすい物質が多く存在します。フレーバー成分の酸化分解により食品の香りが失われるばかりか、異臭物質(オフフレーバー)となって食品の香りを変化させることがあります。例えばシトラス系のフレッシュな香りに代表されるシトラールは、酸化劣化によりフォトシトラール(金属臭)、p-メチルアセトフェノン(アーモンド臭)、p-クレゾール(薬品臭)といったオフフレーバーを発生させることが知られています。

フレーバー成分

食品酸化の種類

『酸化』は複雑な反応であり、酸化対象物質とその酸化を生じる要因によって様々な種類の『酸化』が存在します。酸化する物質によって全く異なる変化となりますし、また同じ物質の酸化であっても酸化条件によって発生する酸化物が異なり、食品劣化の感じ方も異なるものとなります。
例として、光が関与する主な酸化反応では、『光酸化』と『光増感酸化』の2種類の酸化機構が挙げられます。『光酸化』とは紫外線などが持つ光エネルギーによる、脂質やタンパク質など食品成分の直接的酸化反応であるのに対し、『光増感酸化』とは光増感物質と呼ばれる成分(乳製品などに多いビタミンB2、緑黄色野菜に含まれるクロロフィルなど)が特定波長の光エネルギーを吸収し、活性酸素を発生させることで進行する酸化反応です。近年ではLED照明が普及し、LEDは蛍光灯と比較して紫外線量が少ないことから、『光酸化』を生じにくいと言われてきました。しかしながら、『光増感酸化』は光源と光増感物質の組み合わせで生じる酸化反応であり、LED照明下においても短期間で著しい酸化劣化を引き起こす可能性があります。また、『光増感酸化』では、『光酸化』では生じない種類の酸化物質が発生する場合があることも特徴です。

食品酸化の種類

酸化防止に向けて

世界の人口は現在も増加の一途を辿り、食品の市場規模、流通範囲の拡大に伴って酸化劣化の課題も増加しています。これら食品の酸化劣化に対する対策としては、①保存温度管理、②酸素の遮断、③光の遮断、④酸化促進物質(金属イオン・光増感物質など)の除去などが挙げられますが、製造時や保管時のコストアップ、酸素・光遮断容器やフィルム包装で商品を被うことによる商品魅力の低下、製造時管理項目の複雑化など、対策を講じることにより生じる無視できないデメリットも多くなります。その為、一般的には可能な限り酸化要因は排除しつつ、かつ酸化防止剤を併用することで対策を行うことが望ましいとされています。
しかしながら、上述した通り食品の酸化は非常に複雑な反応であり、その酸化反応の種類によって酸化劣化の進み方も大きく異なるものとなるため、何でも良いから「酸化防止剤」を使用すれば良い、という訳ではありません。食品の劣化防止のための『抗酸化』としては種々の方法がありますが、適切な『抗酸化』には、まず食品においてどのような『酸化』が生じているかを知ることが最初の一歩です。

次回からは、食品の美味しさを守る手法の基本、『抗酸化』についてご紹介致します。
太陽化学では、『酸化』のメカニズムに応じた適切な『抗酸化』を提案します。食品の酸化劣化に対し、私どもと一緒に最適な『抗酸化』を考えてみませんか。

酸化防止に向けて

(2017年8月)

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