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食品の酸化防止講座 食品の酸化防止講座 食品の酸化防止講座

第5回「高機能性酸化防止剤製剤 スーパーエマルジョンTSシリーズ」

第4回では、抗酸化素材の活性を効果的に引き出すための『製剤化技術』について紹介しました。食品添加物として認可されている酸化防止剤の種類は限られているため、目的に応じて適切な抗酸化素材を選択するだけでなく、選んだ抗酸化素材がその活性を十分に発揮できる環境を整えることも重要です。
酸化防止技術講座の最終回となる今回は、太陽化学の酸化防止剤製剤である『スーパーエマルジョンTSシリーズ』の特徴と、実際の飲食品の酸化劣化に対する効果例をご紹介致します。

スーパーエマルジョンTSシリーズ

太陽化学の酸化防止剤製剤である『スーパーエマルジョンTSシリーズ』は、抗酸化素材の活性を最大限に引き出す製剤設計により、高い酸化防止効果を得ることが可能な高機能性酸化防止剤製剤です。その設計のポイントは、<乳化製剤化>、<粒子径制御>、<抗酸化素材の一剤化>です。

乳化製剤化

スーパーエマルジョンの特徴

『スーパーエマルジョンTSシリーズ』は、乳化剤の機能により抗酸化素材を乳化製剤化しています。これにより、脂溶性抗酸化素材については水系飲食品に対する分散性が向上し、水溶性抗酸化素材については油性成分への浸透性を高めることができています。また、太陽化学の乳化製剤は耐熱性・耐酸性・耐塩性・アルコール耐性に優れ、各種の飲食品に適用可能であることも特徴です。

粒子径制御

『スーパーエマルジョンTSシリーズ』では乳化粒子を微細化することで、粒子の数と表面積が増大し、抗酸化素材がより効果を発揮しやすい環境を作ります。さらに光学散乱を引き起こさないレベルまで微細化することで、乳化製剤でありながら透明分散が可能となり、濁りなどによって飲食品の外観を損ねることもありません。

抗酸化素材の一剤化

『スーパーエマルジョンTSシリーズ』には、飲食品の酸化メカニズムに応じて適切な抗酸化素材を組み合せた製品ラインアップがあります。特徴の異なる複数の抗酸化素材を活用することで、総合的に優れた抗酸化効果を得ると共に、本来混ざり合わない脂溶性・水溶性抗酸化素材を一剤化することで得られる相乗効果を発揮することも可能となります。

乳製品の酸化劣化防止

第2回 食品成分は酸化でどうなる?」において、光が関与する主な酸化反応として、『光酸化』と『光増感酸化』の2種類の酸化機構が挙げられることを紹介しました。乳製品中では光照射下においてビタミンB2が光増感酸化を引き起こし、乳脂肪や乳タンパク質が著しく劣化しますが、『スーパーエマルジョンTSシリーズ』の添加によりこれらの酸化劣化を効果的に抑制します。

生クリームにおける乳酸脂肪の酸化と、抗酸化素材(トコフェロール)量の変化を測定

生クリームに蛍光灯もしくはLED光を照射した場合、油脂の酸化指標である過酸化物価が大きく上昇しました。全く同じ種類、同じ量の抗酸化素材の組合せ(トコフェロール、茶抽出物)であっても、直接添加した場合と比較し、乳化製剤化した『スーパーエマルジョンTSシリーズ』として添加した方がより大きく酸化を抑制していることが分かります。また、抗酸化素材として使用したトコフェロール量を光照射後に測定しますと、『スーパーエマルジョンTSシリーズ』のトコフェロールがより多く減少していました。トコフェロールは抗酸化効果を発揮することで消費されますので、『スーパーエマルジョンTSシリーズ』の抗酸化素材がより効果を発揮し易い環境にあることを示しています。

無脂肪ドリンクヨーグルトにおける乳タンパク質由来の異臭成分をGC/MS分析

脂肪分を含まない無脂肪のドリンクヨーグルトにおいては、乳タンパク質由来の異臭成分が検出されました。その中でも特定悪臭物質に指定されているジメチルジスルフィドの発生が乳製品光劣化の特徴ですが、乳製品の光増感酸化防止に適したタイプの『スーパーエマルジョンTSシリーズ』を添加することにより劣化臭の発生を抑制し、チルド飲料やデザートショーケースの光照射下においても出来たてのフレッシュ感を維持することが可能となります。

果汁飲料の酸化劣化防止

果汁には様々な色素成分やフレーバー成分が含まれており、酸化劣化により変色・退色や異臭成分の発生を生じる場合があります。優れた酸化防止剤としても作用するビタミンCやポリフェノール類を豊富に含む果汁飲料も多いですが、これらだけでは十分な酸化防止効果は得られにくく、またビタミンCやポリフェノール自体が異臭や変色の原因となる場合もあるため、果汁飲料に本来含まれている抗酸化成分と、そこへ添加する酸化防止剤のバランスを考える必要があります。

リンゴ果汁飲料における劣化異臭物質のGC/MS分析

リンゴ果汁には近年注目されているリンゴポリフェノールが含まれていますが、この成分は酸化型のビタミンCと反応しやすい性質を有しており、ビタミンCの添加がリンゴ果汁飲料の劣化を促進してしまう可能性が報告されています。酸化防止剤を使用しない場合ではアルデヒド類などの劣化臭原因となる酸化物が発生してしまうため、リンゴポリフェノールと反応しにくい脂溶性抗酸化素材配合が多いタイプの『スーパーエマルジョンTSシリーズ』の添加が特に有効です。

吸収波長スペクトル

オレンジ果汁に含まれるカロテノイド系の色素や、ブドウ果汁に含まれるアントシアニン系の色素はそれぞれ天然の抗酸化物質としても知られています。果汁飲料中の各種成分が酸化される場合に、これら色素成分が抗酸化効果を発揮する一方で消費されてしまい、果汁飲料の色味が変化してしまっていることが各飲料の吸収波長スペクトルからも分かります。より抗酸化反応速度の高いタイプの『スーパーエマルジョンTSシリーズ』を添加することで、これら色素成分よりも早く抗酸化効果を発揮し、色素成分が減少することを防ぐことも可能となります。

おわりに

食品の酸化防止講座では、第1回に飲食品の品質劣化を引き起こす酸化反応について、第2回では食品成分毎の酸化メカニズム、第3回では酸化の原因と抗酸化素材の種類を、第4回では抗酸化素材の活性を引き出す製剤化技術を紹介してきました。第5回となる今回は、飲食品の複雑な酸化・抗酸化反応メカニズムの把握に努め、ロジックに基づいた設計を心掛けて開発に取り組んだ太陽化学の酸化防止剤製剤『スーパーエマルジョンTSシリーズ』の特徴と効果例の一部分を紹介しました。
太陽化学では飲食品の風味劣化や廃棄ロスといった問題解決に、更にはより高品質な飲食品の提供に貢献することを目指し、酸化防止剤製剤『スーパーエマルジョンTSシリーズ』の開発を今後も続けていきます。目的に応じたタイプの酸化防止剤製剤提案・設計を行いますので、まずはご相談頂けましたら幸いです。

(2018年10月)

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