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第1回「たまごの保水性」

たまごの3大キノウのうちのひとつ、「保水」キノウについてご紹介します。

様々な場面で使われる卵白の「保水」キノウ

ハンバーグを作るとき、たまごをつなぎのひとつとして利用するのは一般的です。「つなぎ」という名前ですが、実はたまごがなくてもハンバーグはひとつにまとまります。では、なぜたまごを入れるのでしょうか?
それは、たまごのキノウのひとつである「卵白の凝固性」から発生する「保水」キノウが理由です。少量のたまごをつなぎとして混ぜ込むことにより、卵白が凝固してできた構造の隙間に水を抱き込みます。このことにより、ハンバーグはよりジューシーになります。その他、低価格の鶏ムネ肉をジューシーに美味しく食べる方法として、卵白を揉み込むという裏技も知られています。
このように、家庭でも利用される卵白の凝固・保水性は加工食品の製造の現場でも多く活用されています。ハムなどの畜産加工品や麺類などにもこのキノウが活用され、よりおいしい食品として食べられています。

様々な場面で使われる卵白の「保水」キノウ

「保水」キノウはどのように起こるのか?

卵白のみを加熱して固めると、ゆでたまごの白身のように固まります。茶碗蒸しを作る際にだし汁と卵液を混ぜて蒸し上げると固まるを想像して頂くとわかりやすいですが、卵白と水を均一に混ぜて加熱しても固まります。この際、たまごと水分が分離することなく固まることから、卵白が凝固することでたまごの「保水」キノウが発揮されていることがわかります。ただ、以下の図から分かるように、完全に水を逃がさない訳ではありません。

図:ゲル化卵白の離水量測定の様子

図:ゲル化卵白の離水量測定の様子

このキノウがどのように起こるのかは、その加熱凝固ゲルの網目構造から説明可能です。卵白の蛋白ゲルの網目構造の隙間に水が保持されることで、加熱時に水を保持するキノウが発揮されます。このゲル化時の網目構造状態により、保水キノウは変化します。ゲル化は他の蛋白も持つ機能ではありますが、卵白は非常に凝集性の低い構造(網目が粗い)となっているため、より保水のキノウが高いと考えられます。このキノウがあるからこそ、たまごは「調理工程での過度の水分蒸発の抑制」「澱粉の老化による自由水の増加の抑制」「出来立ての食感の維持」などの目的で様々な場面で活用されているのでしょう。 

図:一般的な卵白の加熱時網目構造

図:一般的な卵白の加熱時網目構造

卵白の保水と凝固の「キノウ」を改質すると

卵白のこのチカラは、食感の維持や保水を目的として利用されています。卵白のゲル化の構造を改質することで、それぞれ利用の目的に合わせた最適なキノウを発揮をさせることができます。

カマボコと「凝固」キノウ

かまぼこは「ぷりっと弾力がある」のが特徴の食品です。この固さを出すために卵白が昔から利用されてきました。ゲル化状態を改質した卵白を利用することで、より強い弾力を付与することができます。太陽化学の卵白粉末素材「サンキララSHG」は、加熱時の蛋白凝集性を改質することで、液卵白の約3倍のゲル強度を有する素材です。以下の図から分かるように、サンキララSHGのゲルは、結び目の多い緻密で強固な構造をしています。このようにゲル化状態を改質した素材は、結着性、弾力性、保水性、固さを必要とする食品の改善に向いています。

カマボコと「凝固」キノウ

麺の食感と「保水」キノウ

麺には従来よりその美味しさをアップするために卵白粉末が利用されてきました。卵白を加えると「ぱきっとした」固い食感になる、と言われています。これも卵白の「凝固」と「保水」キノウを利用しているものですが、麺の食感に求められるのは「固さ(弾性)」だけではありません。「粘性」と表される、口当たりのなめらかさや喉ごしの良さも大切です。粘性は一般的な卵白粉末では付与できませんでしたが、ゲルの網目構造改質で「保水」キノウを高めることで実現可能です。

「保水」キノウを改質した太陽化学の卵白粉末素材「サンキララRS」は、ゲル化時の網目構造の緻密性が高いという特徴があります。網目が細かくなることで、より「保水力が高い」状態になり、麺は極めて高い粘弾性を示すようになります。さらにその高い保水性から冷凍麺の保存耐性や調理麺の湯伸び抑制にも効果的です。

麺へ利用する卵白粉末には、太陽化学独自の加工技術であるPF加工を施した「サンキララ21」という製品もあります。こちらは、PF加工により卵白のキノウをより高めた卵白粉末素材です。

畜肉加工品と「凝固」「保水」キノウ

ハムやかまぼこなどに卵白を添加すると、卵白独特の「ぷりっとした」食感が生まれます。この食感はかまぼこでは自然な食感として受け入れられますが、畜肉加工品では「肉っぽさが足りない」食感となってしまうと言われています。加工・業務用の食肉、魚介類の保水や品質保持には、主にカゼイネートやWPCのような乳蛋白・卵白・大豆蛋白といった蛋白質系の保水剤や重合リン酸塩を組み合わせて配合することにより、望ましい食感の設計が行われてきました。ところが、蛋白材では「かまぼこっぽさ」が課題であり、重合リン酸塩などの使用では、筋肉繊維蛋白質の溶融化により、肉本来の繊維感がなくなってしまいます。

この課題を解決するため、当社が開発した卵白素材『卵白加水分解物』は、卵白蛋白質が低分子化されているためにゲル化作用を持たず、肉繊維を溶融することもないため、肉本来の繊維質のある食感を保持しながら、保水性を改善することができます。

畜肉加工品と「凝固」「保水」キノウ

卵白加水分解物は、一般的な蛋白素材と同じように加熱による筋肉繊維の収縮を抑制する効果があり、ボイルエビなどの食感改良に効果的です。上図は卵白加水分解物溶液に浸漬した冷凍ボイルエビの収縮状態の試験例です。卵白加水分解物溶液に浸漬させることで20%程度収縮が抑制され、やわらかさを維持することができます。同様に、豚カツやハンバーグなどの畜肉総菜のやわらかさを向上させ、広く総菜類に使用可能です。

★タマゴのマメチシキ!「たまごとカキタマスープ」

カキタマスープを作るとき、スープの最後の仕上げにたまごを流し入れると繋がりのあるカキタマになります。ところが、加工用で販売されている「液卵」で同じことをすると、流しいれるスープ内にほぼ均一に分散してしまい濁ったスープとなります。これではおいしくなさそう・・・。
普通のたまごだとカキタマが出来上がるのに、液卵だと出来ない理由ははっきりしています。一般的な加工用の液卵は殺菌や異物排除の目的で「メッシュ」処理が行われますが、この処理を行うことで、たまごの蛋白のネットワークが破壊されてしまいます。蛋白どうしのつながりがなくなってしまうため、たまごがスープの中に分散してしまうのです。最近では、この課題を解決するために殺菌に工夫をした液卵も販売されています。

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