Vol.3 食品の中の水
執筆:羽木 貴志(おいしさ科学館館長)
新鮮な生野菜はシャキシャキした食感ですが、乾燥するとその食感は低減します。逆に、お菓子やフライ食品が吸湿するとパリパリやサクサクした食感は低減します。
この現象を水分量だけでは説明ができません。食品中の水の状態によって、拘束性や粘性など物理的性質(物性)が著しく異なります。食品の食感に水の分散組織構造が大きく影響していると考えられます。
卵白を加熱し、ゲル化すると、蛋白がネットワークを形成し、水の入れ物となる器(組織)となります。一方、澱粉やカラギナンなどの水分散液を加熱・冷却するとゲル化し、多糖類が水の入れ物となる器(組織)となります。電子顕微鏡でみると、卵白の加熱ゲルは、器の大きさが孔経約5μm、器の厚みが約0.5μmであるのに対して、カラギナンのゲルは、器の大きさ、器の厚みは、卵白ゲルの約1/10であり、この差が卵白ゲルとカラギナンゲルの物性の差に大きな要因となっていると考えられます。
水が食品の中にどのように存在しているかをおいしさ科学館ではIRイメージングを用いて解析しております。下図は、各種多糖類用いたゼリーについて、IR イメージング分析より得られた水と多糖の分散値と官能評価の評価の相関解析結果で、左が「さくみ」、右が「くちどけ」との相関です。水と多糖がどのような分散にあるかで、ゼリーの食感に大きく影響すると考えられます。