【第1回】乳化と乳化剤
1.水と油は混ざらない?
皆さんご存知の通り水と油は混ざりません。しかし世の中には牛乳やマーガリンと言った、水と油の様に本来混ざり合わないもの同士が混ざりあった製品が数多く出回っています。では、どうして混ざり合っているのでしょうか?それは乳化しているからなのです。この乳化という現象を可能にしているのが乳化剤です。
2.乳化とは?
乳化とは本来混ざり合わないもの同士が、どちらか一方に分散し、均一な状態となっていることを言います。例えば水と油を瓶に入れ、混ぜようとしても、すぐに2層に分離してしまいます。この水と油の間にできる境界面を「界面(Interface)」と呼びます。
界面には、境界面をできるだけ小さくし、安定しようとする力(界面張力)が働いています。自然の状態では水と油は、この界面張力が強いため水は水同士、油は油同士まとまって、界面の面積を最小にしようとするため混ざりあうことはありません。
すべての物質や分子にはお互いに引き合う力(分子間力)が働いています。しかし水の分子間力が強く、また水と油の分子は結びつく力が弱いために、水と油の界面にある分子は内側にある仲間の分子(水なら水の分子)から強く引っ張られることになり、界面にある分子は常に内側へ入っていこうとします。その結果、界面は最も表面積の小さい状態(分子の数が少ない状態)、つまり混ざり合わずに水平に分離した状態になるわけです。
この界面に作用し、性質を変える動きをもつ物質を界面活性剤といい、その中で乳化目的に使われるものを乳化剤と呼びます。乳化剤は、界面に取り付き界面張力を弱めるために面積が広いままでも安定し、水中に油が粒子として混ざり合った状態で存在することができるようになります。
乳化剤が界面張力を弱めることで、油を均一で細かい分散粒子にするとともに、表面に取り付いた乳化剤が保護膜となり粒子同士が吸着、合一することを防ぎ、乳化状態を安定化します。
3.食品と乳化
食品中で水と油が乳化している時、水の中に油が粒子となっている場合を水中油型=O/W型(Oil in Water)と言い、反対に油の中に水が粒子となっている場合を油中水型=W/O型(Water in Oil)と呼びます。O/W型乳化の例が牛乳、アイスクリーム、マヨネーズなどで、W/O型の例がバター、マーガリンなどです。O/W型とW/O型にはそれぞれ適した乳化剤があります。
4.乳化剤の種類
食品に使われる乳化剤は、約2000種類あるという界面活性剤のうち、安全性が優先され食品添加物として指定されたもので、規格基準が決められています。また、界面に作用するという特性を生かして乳化目的以外にも多くの用途に使われています。
当社で取り扱っている乳化剤の種類
- グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド)
- ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンエステル)
- 有機酸モノグリセリド
- ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンエステル)
- プロピレングリコール脂肪酸エステル(PGエステル)
- ショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)
- レシチン(植物、卵黄、分別)
- 酵素分解レシチン