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おいしさを支える研究と技術 おいしさを支える研究と技術 おいしさを支える研究と技術

果肉はないのに果肉感の実現?

ホンモノ感の追求が盛んです

身近な「食」のトレンド、特に世界の最先端の流行は誰もが気になるトピックです。最近では「培養肉」や「昆虫食」など、今までの食の「当たり前」を崩すような概念が出てきているのはご存知でしょうか?試験管やシャーレで培養された「肉」や、粉末化したコオロギ蛋白…など、なかなか想像がつかないことと思います。しかし、食べる側としては、そのような新たな食材も、今まで知っている美味しい食品の形で食べたいという人が多数でしょう。新しい食材をどのように従来までの「おいしそう」と思える食の形に近づけられる、つまり模倣(imitation=イミテーション)とできるのか・・・それは食品業界のこれからの課題にもなっていくでしょう。
・・・といいながらも、実は昔から「いかに本物に近づけられるのか」という課題を解決するために涙ぐましいほどの努力が成され、幅広い食品のさまざまなところで「イミテーション」のための技術が磨かれているのも事実です。

安定剤でのイミテーション技術って?

まるで○○食感・・・最近よく見かけませんか?ゼリー、グミ、アイスクリーム・・・フルーツそのままではないのに、まるでフルーツをそのまま食べているような食感、より「ホンモノ」っぽい食感が喜ばれています。ここでひと役買っているのが、「安定剤」です。昔の食事情として、高級なフルーツをそのまま食べることができない・・・という悩みに対して、いかにゼリーなどで「香り」「味」「食感」を工夫してホンモノっぽさを再現できるかがチャレンジされてきました。ホンモノのフルーツが入手しやすくなった現在でも、加工食品にて必須となる殺菌工程を経ると本来の食感や味・香りが失なわれてしまったり、異物混入防止の観点からホンモノを使用するのが難しかったり・・・、色々な事情からよりホンモノに近づける技術は研究され続けています。
カラギナン、ペクチン、グァーガム、ローカストビーンガム・・・・様々な素材が増粘安定剤に該当します。安定剤で演出できる「食感」、ホンモノ感を演出する技術についてご紹介しましょう。

安定剤でのイミテーション技術って?

ゲル化状態のコントロールでまるで果実の飲みごたえ!

オレンジ、リンゴ、マンゴー、ピーチ・・・色々な味の清涼飲料水がありますが、「果汁や果実が入っているような味わいなのに、表示を良く見るとほとんど果汁は入っていない!?」と驚いたことはありませんか?実はこれも安定剤の技術のひとつです。香料などで香りと味を調整するのはもちろん重要ですが、安定剤で「すりおろし果実」や「果汁たっぷりのとろみのあるジュース」を演出することが可能です。
たとえば、「すりおろしりんご」の入った飲み物、安定剤の特性を利用することにより、ホンモノのりんごを使用せずとも再現可能です。水溶液中のカルシウムと反応することによってゲルを形成する性質を持つ安定剤を活用します。ジュースの中に少しずつ安定剤溶液を入れることにより、ジュース内につぶつぶのゲル化物を形成させます。普通のゼリーと異なって部分的に固まることにより「もろもろ」とした果肉っぽい食感を演出できます。「硬さ」や「大きさ」など、条件を調整してゲル化の状態をコントロールすることにより、りんごだけではなく梨など他の果物の存在感も演出可能でしょう。

ゲル化状態のコントロールでまるで果実の飲みごたえ!

冷凍解凍で自然な果実の繊維感を演出!?

安定剤で固めたゼリー、水溶液に安定剤を分散・溶解して冷却するという過程で製造されると、通常は全てが均一な食感のゼリーが出来上がります。ここで、果物を食べた時のことを考えてみてください。全ての食感が均一な果物はほとんどないのではないでしょうか?多くの果実が繊維を含んでおり、その繊維感が果実の食感を不均一にしています。ゼリーでもホンモノ感を求めるのであれば、できるだけ自然の果物に似せた不均一な食感を再現したいところです。ココに着目し、安定剤の特性を利用して繊維感を演出する技術があります。

先ほどの食感が均一のゼリー、冷凍解凍してから食べてみると・・・ゼリーの中に繊維っぽい食感を感じることができます。実際にゼリーを光に透かして見ると、網目状の繊維のような模様も確認できます。これは一体どういうことなのか?諸説ありますが、太陽化学ではこう考えています。

冷凍解凍で自然な果実の繊維感を演出!?

図では簡易的に繊維密度は最小限で表現していますが、実際の安定剤の網目構造はもっと密に絡みあっているため、冷凍解凍後には網目構造が密になって繊維のような目に見える筋を形成します。
このように冷凍解凍で繊維感を演出するにあたっては、その配合や組み合わせにも工夫が必要です。

増粘安定剤の技術はこれからも

昔から研究されてきた増粘安定剤の技術のご紹介、いかがでしたでしょうか? 過去に必要とされたニーズから様々な技術が生まれていますが、これからの食のニーズの変遷に合わせ、その技術を新しい形で活用していくことができる可能性もあります。ゼリーや飲料においては、例えば「カロリーは抑えたいけれどもしっかり果汁感を演出したい」というニーズは既にあり、それに応える形で安定剤の技術が活用されて様々な商品が出ています。
これからはどのようなニーズがでてくるのでしょうか?糖質は抑えるけれども高蛋白にしたい、など色々な理想が出てくることが予想されます。そんなとき、過去より深められてきた増粘安定剤の技術が必ずカギとなってくるでしょう。

(2018年3月)

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