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おいしさを支える研究と技術 おいしさを支える研究と技術 おいしさを支える研究と技術

乾燥食材をより“ホンモノ”らしくする技術とは?

どうしても“ホンモノ”が使えない場面、ありますよね?

「簡便性」や「保存性」の高さ、忙しい現代の生活の中で一部の食品に必ず求められるものです。お湯をかけるだけ、電子レンジでチンするだけ、そのまま食べられる・・・いろいろな形態の便利な加工食品がたくさんあります。このイミテーションのコラムvol.1で触れた「新たな食材をおいしく」するために必要となってくるであろうイミテーションの技術。その一角となる既存の技術が、既に「簡便性・保存性」と「おいしさ・本物らしさ」を両立するために多様な加工食品で活用されています。

“ドライ”の世界でもホンモノ感?

保存性と簡便性を両立した加工食品というと、乾燥食品が第一に挙がると思います。お湯で戻すだけの即席麺、即席スープなど、忙しい時の非常食として手元に保管されている方も多いのではないでしょうか。最近ではお湯をかけるだけでできる麻婆豆腐など、「惣菜」もありますよね。このような「直ぐ食べられる」加工食品を、より「おいしく」するために活用されている乾燥技術というと、「フリーズドライ」が真っ先に思い浮かぶ方が大半だと思いますが、今回はより「ホンモノ感」を追及するイミテーションのコラムとして、ホンモノよりもホンモノらしさを実現し得る「マイクロドライ」をご紹介します。

  • マイクロ波加工(microwave drying process)による乾燥技術のことを『マイクロドライ』としています

『マイクロドライ』とは?

即席麺などに使用される乾燥食品は、食材から水分を飛ばして乾燥させ、そこに再度水を加えて“元の状態に戻して”食べられるようにしています。野菜・肉やたまご・海産物・・・など、単純に乾燥させるだけでは、復元した時に食感や色味などが乾燥前と同じにならないことが多く、いかに復元した際に“ホンモノ”らしさを保つのかはドライ品を作るときの課題です。この点、マイクロドライは“ホンモノ”らしさを最終的に演出するためにいろいろな調整をすることが可能です。
それはなぜか?・・・実は、素材をそのまま凍結乾燥させる「フリーズドライ」や「エアードライ」と異なり、「マイクロドライ」では素材そのままを乾燥させている訳ではないからです。
「モト」となるのは、素材を練り合わせた生地であり、その生地を成型してマイクロ波を照射することにより、「乾燥品」が出来上がります。乾燥時に、急激に水分が蒸発することによって生地中に空隙が発生しますが、その大きさをコントロールすることなどで、食感や見た目などを調整することが可能となります。

『マイクロドライ』とは?

“油”までも再現可能!?

ここまで、抽象的な説明ばかりでしたが、ここで、具体的にどんな「イミテーション」ができるのか、見てみましょう。

難易度の高いドライ加工を実現!?

難易度の高いドライ加工を実現!?

一般的に油を多く含むものをドライ状態にするのは難しいと言われていますが、マイクロドライを利用してガッツリ系のラーメンに入っている“背脂”をより本物に近い形で乾燥加工することができます。以下の写真の白い粒は70%ほどの豚脂を含み、かつ乾燥しています。これにお湯を注ぐと・・・少し表面がつるっとした食感の白い粒がお湯の表面に浮かびます。ラーメンスープに白い背脂が浮かぶガッツリ系ラーメンを彷彿とさせますよね。もちろん、背脂が入っているラーメンのように、ここから脂が染み出すことでスープの味もガッツリ系になります。

背脂風味乾燥品 お湯を注ぐと・・・

マイクロドライ、どんな場面で活用できるのか?

乾燥品の最終形態を調整するにあたり、マイクロドライでは色々なアプローチが可能です。今後、簡便性を求めて乾燥加工品の種類が増加し、その原料に使用される材料が変わるにつれて、乾燥加工品への“ホンモノ感”は、より必要とされてくるでしょう。
また、視点を変えてみると「リスク低減」という意味でも、“イミテーション”の技術が必要とされるのではないでしょうか。実際の海産物などをそのまま使用したドライ品は、どうしても「異物」とされるものが混入しますが、マイクロドライは「モト」が粉末か液体となるため、より異物混入リスクが低い乾燥品を設計することが可能です。乾燥加工の技術としてあまり知られていないであろう“マイクロドライ”、イミテーションに向いた技術として様々な場面で活用される可能性を秘めています。

(2018年4月)

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