急速に発展するタイの食品市場はどこへ向かうのか?
~FIA2017~
東南アジアの最先端、タイでの食品素材・添加物の展示会
2017年9月13日(水)~15日(金)、タイの首都バンコクのBITEC展示場にて開催されたFIA (Food Ingredients Asia) 2017に出展しました。本展示会はアジア地区では最大規模の食品素材・添加物関係の展示会であり、2年毎にバンコクで開催されます(その間の年はインドネシア、シンガポールなど他の国で開催)。
今回のFIAでは世界72カ国から2万人以上が来場、前回2015年のバンコク開催時に比べて来場者が約19%増加しました。開催地ということもあり、タイからの来場者は全体の75%を占めます(グラフ参照)。
バンコクは複数のエアラインのハブ空港があり東南アジア各国の主要都市からのアクセスが良いこと、特にバンコク市内は近代化が進んでいることなどから、バンコクで開催される年の来場者が最も多く、また近年の東南アジア地区の経済成長・近代化・食文化の変化などを背景に、海外からも含めて展示会への出展者および来場者は年々増加しています。
この展示会に、太陽化学も出展しておりますが、その展示内容をご紹介する前に、現在のタイの食品事情について現地駐在員の目線からご紹介しましょう。
タイの人口も高齢化 ~国家として進める健康維持対策も~
タイでは近年、高齢化が急速に進んでおり、また古くからの食文化の影響で砂糖の摂取量が非常に多い(タイは世界で5番目の砂糖消費国)事もあり糖尿病患者が増加しています。その他、タイ料理は酸味があり辛い味付けが多いという印象の方が多くいると思いますが、塩分の摂取量も非常に多く、肥満と生活習慣病の増加が社会問題となっています。バンコクに駐在している筆者も毎日タイ料理を食べていますが、特に屋台で食べるタイ料理は、ものすごく塩とうま味調味料の含量が高い…と感じています。それでも、美味しいので食べてしまうのですが…。辛いものは好きなので、現地の方と同じように唐辛子やナンプラーを使用しますが、現地の方はより多量の唐辛子と、更に砂糖も使用されています。現地の方は、スリムな体形の型もいらっしゃいますが、特に年配の方に肥満が多い印象です。
タイ国民の健康状態を危惧したタイ政府により、2016年に一定の条件を満たした飲料・食品に対してヘルスマーク(日本のトクホマークのようなもの)が付与できるレギュレーションが施行されました(ただしヘルスクレームは一切出来ません)。また、加工食品の原材料表示(全成分表示)や栄養成分表示が義務付けられ、食品メーカーではこれまで以上に原料素材への配慮が必要な状況となっているようです。
タイの屋台事情 ~屋台からコンビニエンスストアへ~
タイの食文化において屋台は外せません。バンコク市内でも串モノ(鶏・豚・魚などの焼き物、揚げ物)、クイッティヤオ(タイのヌードル)、ガパオ、カオパッド(タイ炒飯)、パッタイ(タイ焼きそば)、ソムタム(タイ東北地区の青パパイヤのサラダ)など、歩道・車道構わず道路の両側に所せましと立ち並ぶ多くの屋台が、何十年もの間タイ(特にバンコク)の名物となってきました。一般的に屋台で売られている食品は非常に安価で、地元民は勿論、地方から出てきている労働者や、夜の街関係者、旅行者などで賑わいを見せています。屋台は特定の大通りの歩道や特定のSoi(大通りからの横道をソイと言います)に集まって屋台街を形成している場合が多く、屋台の名所となっているSoiも幾つかあり、ガイドブックなどで屋台通りとして紹介されている所もあります。
そんなタイの屋台文化に実は変化が訪れています。タイ政府が年々、屋台への規制を厳しくしているのです。何十年もの間、屋台で有名だったSoiから屋台が撤去され(禁止命令が出て営業できなくなった)、いまでは屋台が1台も出なくなってしまったSoiもあります。また、バンコク市内では月曜日は屋台が出せない規制があり、通常は屋台が出ているSoiでも月曜日は屋台が出ていないために人通りも少なく日常とは違った様相です。屋台街によっては、指定された他のエリアに場所を設け、新たな屋台モール(市場)として再開している所もありますが、商売の継続が難しくそのまま撤退を余儀なくされるケースも多いようです。いずれにしても、このような規制は今後も継続・強化され、タイの屋台は減少の一途を辿ると予想されています。
屋台の減少とは反対に、コンビニエンスストアの店舗数が増加しており、また販売される商品の内容もここ数年でかなりの変遷(進歩)が見られるようです。現在のタイ国内のコンビニエンスストアの店舗数は既に1万店を越えており、今後も増えることが見込まれます。コンビニエンスストアで弁当・その他食品を購入する消費者も更に増えていき、屋台が減少していることを背景にコンビニエンスストアのポジショニングが変わってくるとの見方があります。バンコク市内の都市部のコンビニエンスストアではイートインスペースを保有する店舗が増えており、今後は更にコンビニで直ぐに食べられる食品(惣菜類など)を買って食べる人口が増えるのではないかと考えられます。それに伴い、今後もコンビニエンスストアで販売される商品の内容は変化していくと予想されます。
FIA 2017で見られたトレンド
今回の各社出展内容の大きなトレンドとしては、欧米の食品市場トレンドと同様に「オーガニック」や「ナチュラル」といった天然志向に加えて、「Low Sugar」「Low Salt」「Low Fat」「Low Calorie」「Protein」などの健康志向へのアピールが増えていると感じられました。ご紹介したタイの食品事情を背景に、このような天然志向および健康志向に繋がる需要が今後も増えていくように思われます。
今回、弊社もTaiyo Kagakuとして、前回2015年に引き続き2回目の出展を致しましたが、その展示内容の一部は上記の健康志向にフォーカスして、水溶性食物繊維Sunfiberや緑茶抽出物Sunphenonをはじめとした機能性素材および機能性コンセプトについて「SunActive入りFe強化ゼリー飲料」や「Sunfiber入りChewable Tablet」などの試食サンプルとともに紹介し、出展者セミナーではSunfiberの機能性についてプレゼンテーションを行い、タイ国内外からの来場者に興味を持って頂きました。
東南アジアの加工食品・健康機能食品の品質向上・発展に向けての提案
一方で、コンビニエンスストアの急増に合わせて更に広がりを見せるであろう加工食品市場に向けた提案も実施しております。前回出展時にも実施したMD(マイクロウェーブドライ)製品の即席麺用途への提案に合わせ、今回は菓子・べーカリー用途への提案も行いました。チルド・冷凍麺向け麺質改良剤、乳化剤、など多様な食品素材・添加物の提案も行い、ブース内に試食コーナーを設け、当社素材が処方されたチルド麺を調理しMD具材と合わせての試食や、MD顆粒(抹茶、ストロベリー)入りクッキーやチョコレートの試食、前述の機能性素材の試食など、各種の試食サンプルが大変好評であった事もあり、幣社ブースは大盛況のうちに3日間の日程を終えることが出来ました。
東南アジアでの開発案件もぜひお問合せください!
東南アジアの中でもタイは最も近代化の進んでいる国のひとつと言えます。これまで二度の世界大戦を経験してはいますが欧米諸国など他国による統治を受けておらず、また立憲君主制という政治体制により、古くからの伝統色文化に近代的なもの、西洋的な要素が融合した独特の食文化の成長を見せています。その様な中で、コンビニエンスストアの台頭が著しく、それに伴い冷凍食品・チルド食品・インスタント食品の品質向上が見られます。これまで東南アジアの食品産業は日本に比べて10~20年遅れていると見られていましたが、ここ最近の発展で急激に日本の品質に近づいて来ているのではないでしょうか?
また、まだまだ国民の所得格差、生活水準の格差が非常に大きい社会ではあるものの、急激に進む高齢化社会を背景に健康への関心も強まってきており、機能性食品の市場が大きくなっていくことが予想されます。海外ブランドの機能性食品・サプリメントもスーパーマーケットチェーンやドラッグストアチェーンに並んでおり、特定の購買層が存在しています。
食品産業の発展には、加工食品・健康機能食品の品質向上・発展が求められます。タイ・東南アジアの食品産業の発展をサポートすべく、食品加工技術・品質向上のサポートについて、素材・技術の提案を始めております。気になる方は是非とも情報交換をさせて頂ければと思いますので、是非お気軽にお問合せ下さい。
(2017年12月)