お茶の成分で口腔ケア!「カテキン」の歯垢付着抑制効果
4月の終わりから5月は新茶の季節です。最近では春先になると新茶や抹茶を使った商品で店頭がにぎわい、スーパーやコンビニなどでも身近にお茶の季節を感じることができます。
お茶は、中国から日本に伝来したころ(約1200年前)には薬として重宝されてきたという歴史があり、庶民に広まってからも、お茶でうがいをすると風邪を引かない、茶殻に消臭作用があるといった、お茶に関する知恵が昔から知られていました。近年では、お茶に含まれる各成分の作用の研究が進み、例えばカテキンには抗酸化作用、抗菌作用などがあることが確認されています。
その中でも今回は、お茶に含まれるポリフェノール「カテキン」の歯垢付着抑制効果についてご紹介します。
成人男子26名を対象に、茶カテキンを含む洗口液にて毎食後洗口を3日間行い、歯垢付着への影響を確認しました。対照洗口液(プラセボ)は、カラメル色素、レモンフレーバーを添加した水溶液、試験洗口液は対照洗口液に茶カテキン含有緑茶抽出物を添加しました。
被験者は2群に分けられ、A群は茶カテキン濃度0.037%(低濃度)、B群は茶カテキン濃度0.37%(高濃度)の洗口液を用いました。被験者は試験前に歯科医師により充分に歯垢を除去され、試験開始後は歯ブラシ等の口腔清掃手段を禁止しました。試験(洗口液使用)は3日間行い、朝、昼、夕の毎食後、洗口液によるうがいを実施し、4日目に歯垢付着状態を確認しました。試験は二重盲検法にて行われ、プラセボ使用期間と試験洗口液使用期間の間は1週間の間隔をあけました。
その結果、茶カテキン低濃度、高濃度、いずれの洗口液を用いた場合も、歯垢付着抑制効果が確認され、抑制率はいずれも約37%でした。また歯垢指数もプラセボ使用時と比較し茶カテキンを含む試験洗口液を使用した場合、有意に低くなりました。
「歯垢」とは、歯の表面の白色や黄白色のネバネバした付着物のことです。単なる食べカスではありません。口の中にはたくさんの種類、数の常在菌がいて、口の中で滞留しやすい場所で増殖します。その中で、虫歯の原因菌といわれるミュータンス菌が、糖類を材料にネバネバした物質「グルカン」を作り出します。グルカンは歯に付着しやすいため、増殖した菌とともに付着します。これが歯垢といわれるものです。
茶カテキンにはグルカンを生成する酵素の活性を押さえ、グルカンの生成を抑制する作用があることが報告されています。したがって、茶カテキンを含む洗口液でうがいをしたことで、口の中でのグルカンの生成が抑えられ、歯垢の付着が抑制されたと考えられます。
出典:Terajima T, et al.,Nihon Univ. Dent. J., 71, 654-659 (1997)
(2017年4月)