【第3回】全身の健康を緑茶カテキンでケア!?緑茶カテキンの幅広い機能性とは
緑茶を飲む習慣がある人は、飲まない人よりも死亡リスクが低い…数年前に発表され、注目を集めた調査結果です。緑茶の何が具体的に良いのかは明確には示されておりませんが、緑茶の健康成分である緑茶カテキンが健康維持に大きく関わっていることは間違いないでしょう。緑茶カテキンは健康機能面で長く研究されており、様々な生理活性があることが分かっています。そんな緑茶カテキンの多様な健康機能、効果を発揮する身体の上の方から順番に、簡単にご紹介いたします。
注目される緑茶の成分、カテキンとは?
緑茶カテキンとは、緑茶に含まれる8種類のカテキン類の総称であり、緑茶の茶葉に含まれるポリフェノールの約80%を占めます。加工前の茶葉には4種のカテキンが含まれていますが、加工処理の課程で構造が変化し、緑茶になった段階では8種のカテキンが含まれていると言われています。例えば、エピカテキンの一部はカテキンに変化します。茶葉に含まれるカテキンの中ではエピガロカテキンガレートが一番多いということがわかっています。
お口の健康と緑茶カテキン
「お口の健康」といって何を思い浮かべるでしょうか?子供の頃は虫歯にならないように歯磨きをしたり、学校では定期的に歯の検診があることから、歯の健康への意識は高いと思われますが、成長するにつれて口腔ケアの意識が希薄になってしまう方もいるでしょう。緑茶カテキンには、歯垢の付着を抑制する機能があることや、歯周病を改善する効果を持つ可能性が高いことが様々な試験で分かっております。カテキンの持つ抗菌作用が口腔内細菌の増殖を抑制しているのかもしれません。
このようなカテキンの口腔ケアに寄与する生理活性が認識されてから、“虫歯予防”などコンセプト食品にお茶の成分が利用されるようになっていきました。
アレルギー対策と緑茶カテキン
緑茶カテキンには抗アレルギー活性があると言われています。緑茶カテキンの継続的な摂取によりアレルギー性鼻炎の症状を持つ患者の7割が改善傾向にあることが認められるなどの調査データ1)もあり、緑茶カテキンにはアレルギー症状が出る際に遊離するヒスタミンなどの伝達物質が遊離するのを抑える効果があるからと言われています。このアレルギーに対する緑茶カテキンの効果はあまり幅広く知られているものではありませんが、花粉症の方からすると、カテキン摂取によるアレルギー症状の緩和は体感されやすいもののようです。太陽化学の社員食堂には、食堂利用者が自由に摂取できるカテキンのタブレットが置いてありますが、毎年花粉の季節になると利用率が高く、品薄の状態が続きます。
抗菌・抗ウイルスと緑茶カテキン
いくら身体の健康状態を良好に保っていても、外部からの菌やウイルスの侵入による身体の不調はどうしても起こってしまうものです。そのためには手洗いやうがいなどの基本的な予防行動は必須です。これに加え、緑茶のチカラに着目して『緑茶うがい』をするという予防方法も良く知られています。太陽化学では、この緑茶の抗菌・抗ウイルス活性に着目し、お茶に含まれる成分であるカテキンとテアニンを摂取することで風邪やインフルエンザの予防や症状緩和ができないか試験を行いました。健常な男女108名を対象に緑茶カテキン・L-テアニン組成物(緑茶カテキン340mg+L-テアニン200mg)を2~5月の3ヶ月間毎日摂取した時の風邪・インフルエンザへの影響を検証した結果、予防および症状の緩和に効果があることが確認されました。
ダイエットと緑茶カテキン
緑茶カテキンの健康機能というと、“ダイエットへの効果”を連想する方が多いのではないでしょうか。生活習慣病を防ぐためにも、ダイエットに興味のある方は多いはずです。日本では特定保健用食品でカテキンを有効成分とした食品の認知度が高いため、一番良く知られている緑茶カテキンの健康機能ともいえるでしょう。注目されている生理活性であるため、調査データや実験データも豊富です。ある実験データでは、緑茶抽出物をカテキンとして870mg/日で8週間摂取し、摂取後の身長・体重・ウエスト回りなどの体格変化を測定すると、体重、BMIが有意に低下し、ウエスト回りも低下する傾向が見られたことが報告されています2)。緑茶抽出物に一番多く含まれるエピガロカテキンガレート(EGCg)が特に脂肪燃焼への効果が高いとされており、特にこの成分を用いて“脂肪燃焼”や“脂肪の吸収抑制”などのダイエットへ繋がる生理活性がどのような機構で起こっているのかを解明すべく研究が進められています。
腸内環境と緑茶カテキン
近年興味が高まっている腸内環境改善への取組み、『腸活』ですが、食物繊維などのプレバイオティクスや乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスの他にも腸内細菌叢を変化させる素材はあり、緑茶カテキンもそのひとつです。実際に緑茶カテキンを4週間摂取した人の糞便中の腸内細菌を分離・解析した試験3)では、緑茶カテキンは、腸内細菌の総数や有用菌であるビフィズス菌には影響を与えず、代表的な有害菌であるウェルシュ菌をはじめとするクロストリジウム属の菌を抑えることがわかりました。
骨の健康と緑茶カテキン
ロコモティブシンドロームの危険性が叫ばれる中、“筋力”と合わせて重要なのが“丈夫な骨”です。老年になると骨粗しょう症などで骨折し易くなり、骨折をきっかけに筋力が大幅に低下して活発に動けなくなるというケースは珍しくありません。骨を丈夫にする「カルシウムとビタミンD」というのは小学校の家庭科でも学習するような有名な栄養素ですが、緑茶の成分も丈夫な骨の維持に寄与すると考えられる疫学調査結果や実験データがあります。お茶の飲用暦が10年以上の人はお茶の飲用習慣がない人比べて骨密度が高いということが台湾の研究より明らかになっています4)。また、緑茶カテキンの成分であるEGCgには、その抗酸化作用から、骨を作り出す骨芽細胞が活性酸素から受けるダメージを抑制するという実験データもあります5)。
抗酸化と緑茶カテキン
生体内では常に“酸化”が起こっており、その酸化により生体内成分が変化することが生物の老化現象を進める要因のひとつであることは間違いありません。その酸化の一因が“活性酸素”と言われており、活性酸素は普段の生活の中で恒常的に発生するものですが、飲酒や紫外線、ストレスなど様々な外的要因からも増加することがわかっています。生体内で活性酸素を除去する仕組みはありますが、老化とともにその仕組みは衰えます。生体の酸化(つまり老化)を防ぐには抗酸化の生理活性を持つ機能性成分に頼ることも大切です。緑茶カテキンは抗酸化作用を持つ物質であり、食品成分の中でも高い活性を持つと言われています。
参考文献
1)Yuda K, et al. Jap J Allerg. 48, 384 (1999)
2)Basu A, et al. J Am CollvNutr. 29, 31-40 (2010)
3)Okubo T, et al. Biosci. Biotech. Biochem. 56, 588-591 (1992)
4)Wu CH, et al. Arch Intern Med, 162, 1001-1006 (2002)
5)Vester H, et al. J Inflammation. 11, 15 (2014)
(2018年9月)