スマホ時代へぴったりの商品設計へご提案~ルテインの効果を最大限に引き出す乳化技術~
10月10日は目の愛護デー。
10月10日は厚生労働省が主催(主唱)している「目の愛護デー」です。10・10の形を目と眉に見立てて設けられたそうですが、このころになると秋もいよいよ本番。季語でも「秋澄む」「水澄む」と表現されるように、空気が澄んで遠くまで見通せるようになりますので、日常生活の中で目の疲れに悩む現代人にとっては、爽やかな空気の中で目を休めてあげるのに最適な時期とも言えますね。
愛護デーで数年前に採用されたキャッチフレーズは「たまにはウインクして見よう! ‐右目と左目、見え方同じ?‐」でした。その前までは、子どもの弱視を早期発見することを啓蒙する内容でしたが、ポスターにも大人を起用するなど失明原因を早期発見するために年に一度は眼科専門医を受診することを推奨していました。
失明の原因となる異常が眼に生じると、見え方に影響が出てきます。しかし、初期状態ではほとんど自覚症状がありません。また、進行が緩やかでその変化に気づきにくかったり、脳が見えていない部分を補うことで見えていないことに気づかなかったりするうちに症状が進行してしまい、気づいたときには深刻な状況になってしまっていることも少なくありません。片方ずつの目で見てみると、見えていない部分やゆがんで見える部分がないかをチェックすることができ、眼の疾病の早期発見につながります。
徐々に、目の健康を維持することが大切であると認知されてきて、目のケアのための商品もたくさん出回っています。
「加齢黄斑変性」って?
最近増えている眼疾患のひとつに、「加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration : AMD)」があります。2014年、世界初のiPS細胞を利用した手術が成功したというニュースがありましたが、その臨床研究対象となっているのがこの加齢黄斑変性です。
私たちの目は、光が瞳を通って網膜に当たることで光を感じます。「黄斑」とは網膜の中心部分にあり、さらにその中心部分は中心窩と呼ばれ、見ているところ(固視点)からの光が当たる部位です。ここに光の焦点が合うと、「モノがはっきり見える」状態となるのです。しかし、黄斑部に異常が生じると、見ようとしているモノ(中心窩に焦点を当てようとしているモノ)の信号がうまく伝わらなくなるため、視野の中心部分がぼやける・歪む・暗い・不鮮明になるといった症状が現れます。
加齢黄斑変性とは、加齢にともない網膜の下にある網膜色素上皮という細胞の層の部分に老廃物がたまり、黄斑部に直接または間接的に障害を起こす病気です。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科と山形大学大学院医学系研究科らの研究グループが2015年度に視覚障害認定患者(18才以上)を対象とした原因疾患の全国調査で、高齢者に多く、緑内症、網膜色素変性、糖尿病網膜症につづき、黄斑変性は、8.0%を占めていました。
「加齢黄斑変性」に対するルテイン・ゼアキサンチンの効果
加齢黄斑変性は、欧米では成人の視力消失の主要因であり、より研究が進んでいます。米国国立眼研究所の支援によって多施設共同で行われた加齢性眼疾患研究では、ルテインとゼアキサンチンが配合された処方の摂取群は、配合されていない処方摂取群より加齢黄斑変性の進行リスクを低減したという報告がされています。特に、普段の食事に由来するルテイン/ゼアキサンチンの摂取が少ない人ほど、ルテイン/ゼアキサンチン配合処方の摂取による効果が大きく、リスクがより低減することが示唆されたという結果になっています1)。
ルテイン、ゼアキサンチンは、「黄斑色素」と呼ばれ、緑黄色野菜に含まれるカロテノイドの一種で、ヒトの体内では目の網膜や黄斑部に局部的に存在しています。黄斑部のルテイン/ゼアキサンチン含量が少なくなると黄斑変性症のリスクが高まることが報告されており2)、加齢黄斑変性のリスク低減にはルテインの摂取が重要視されています。ルテイン/ゼアキサンチンの摂取量と加齢黄斑変性のリスクの関連性を示す研究報告もあります。3)
[研究内容]
1年以内に加齢黄斑変性と診断された356人と、コントロールとして加齢黄斑変性以外の眼疾患のある520人を対象に、ルテイン/ゼアキサンチンの摂取量が黄斑変性症の発症リスクに及ぼす影響を調べました。ルテイン/ゼアキサンチンの摂取量が最も少ない群の黄斑変性症の発症リスク(オッズ比)を1.0として他の群のリスクを数値化したところ、ルテイン/ゼアキサンチンの摂取量が多いほどリスクが低いことが確認されました。
アイケアをコンセプトとした製品設計
このように、加齢黄斑変性のリスク低減にはルテインの摂取が重要視されています。ルテインが目に良いという認識が広まっていくなかで、ルテインを配合したコンセプト商品を企画しようとする方も多いかもしれません。しかしながら、カロテノイドの一種であるルテインは脂溶性であり、製品設計への課題が多いと考えられます。さらに、吸収効率が他の脂溶性食品成分に比べて低いことが知られています。カロテノイドは非常に疎水性が高く、また体温に近い温度では固体であるという特徴から、摂取しても胃や腸内での分散性が低いため、多くは吸収されずに排出されてしまうためだと考えられています。
NDS技術でルテインの「体への吸収性」をアップ
太陽化学では、このルテインの挙動を改善することで課題を解決できないかと考えました。太陽化学のNDS技術を用いたNDS化したルテイン製剤を用いてラットおよびヒトにて試験を行い、その血中移行への影響を検証しました。
① ラットによる投与試験4)
ラットに、NDS化したルテイン製剤およびルテイン油懸濁液を、それぞれルテインとして15mg/kgBW単回投与し、投与後24時間までの血中ルテイン濃度を測定しました。
投与後24時間の血中ルテイン濃度を比較したところ、ルテイン油懸濁液を投与した群と比らべて、NDS化したルテイン製剤を投与した群では有意に血中ルテイン濃度が高いことがわかりました。
② ヒトによる摂取試験4)
健康な日本人男性8名(31歳~54歳)を対象に、NDS化したルテイン製剤またはルテイン油懸濁液を含むカプセルを、それぞれルテインとして1日1回6mg、8日間摂取していただき、血中のルテイン濃度を測定しました。試験は、ダブルブラインドクロスオーバー試験で行いました。
【結果】
摂取期間(8日間)の血中ルテイン濃度を測定したところ、ルテイン油懸濁液を摂取した場合よりNDS化したルテイン製剤を摂取した場合の方が、有意に高いことがわかりました。その差は約2倍となりました。また、NDS化したルテイン製剤を摂取した場合、摂取1日目におけるルテイン血中濃度の上昇速度がルテイン油懸濁液摂取の場合より速いこともわかりました。
このように、NDS化したルテイン製剤は、ルテイン油懸濁液と比較し、より速く、より効率よく吸収されることが確認されました。乳化の技術を利用して分散性を良くしたことが吸収率アップの理由と考えられます。分散性が良いということは、水系によく溶けるということであり、飲料やデザートなどアプリケーションの幅が広がる可能性があります。
より体での利用効率が良い製品設計、考えてみませんか?
出典:
1) JAMA. 2013; 309(19): 2005-2015
2) J Optometry. 2004;75(4): 216-230.
3) JAMA. 1994; 272: 1413-1420
4)日本農芸化学会 2015年度大会発表「水溶性製剤化によるルテインの血中移行に及ぼす影響」