機能性表示、新制度施行までのカウントダウン。今できること、すべきこと。
山本(前田)万里
(独)農研機構 食品総合研究所 食品機能研究領域長
食品の機能性(主に3次機能である生体調節作用)に関しては、細胞、動物、ヒトレベルで、産学官を問わず様々な研究が行われてきました。それらの成果としての機能性食品は、特定保健用食品として機能性が表示されて販売されたり、いわゆる健康食品として販売されています。来年4月から新たな機能性表示制度が始まることもあり、機能性農林水産物への期待が高まっています。ここでは、機能性農林水産物のこと、新たな機能性表示制度のことについて考えてみたいと思います。
農林水産物の機能性評価について
我が国では、人口減少と少子超高齢化が急速に加速するとともに、生活習慣病罹患者やその予備軍が増加し、医療費は37.8兆円(H23)まで急激に増大しています。また、平均寿命と健康寿命の間に10年以上の差があり、この原因にも生活習慣病が大きく関わっています。生活習慣病やメタボリックシンドロームは、食生活の乱れや運動不足等に起因するとされています。ここでは、機能性食品の中でも、今後重要になってくると予想される機能性農作物の開発や新たな機能性表示制度について考えてみたいと思います。
1 農産物の機能性を巡る現状
機能性成分を多く含む農産物については、民間種苗会社や独法等で開発されてきました。表1は、農研機構で今までに育成されてきた機能性成分高含有農作物の例1)を示しています。ここに示すように、食物繊維、ポリフェノール、カロテノイド、リグナン、ビタミンなどの含有量を従来の品種より高めた品種が育成され、これらを活用した製品開発もいくつか行われてきました。
表1.農研機構で育成された機能性成分高含有農作物1)
品目 | 品種名 | 機能性成分 | 健康増進効果 | 用途例 |
---|---|---|---|---|
米 | (巨大胚芽)はいいぶき、 ゆきのめぐみ |
γアミノ酪酸(GABA) | 血圧上昇抑制 | 五目ちらし、 炊き込みご飯 |
二条裸麦 | ビューファイバー、 キラリモチ |
食物繊維(βグルカン | コレステロール代謝改善、 免疫賦活作用 |
パン、ケーキ |
大豆 | ふくいぶき | イソフラボン | 閉経後骨密度増加、 脂質代謝改善 |
豆腐 |
クロダマル | アントシアニン、 プロシアニジン |
抗酸化性 | 煮豆、甘納豆、菓子 | |
ジャガイモ | シャドークイーン | アントシアニン | 抗酸化性 | 菓子 |
サツマイモ | アヤムラサキ、 アケムラサキ |
アントシアニン | 抗酸化性、肝機能強化 | 加工食品 |
すいおう(葉) | ルテイン | 抗酸化性、白内障や 加齢黄班変性のリスク の低減 |
おひたし、加工食品 | |
タマネギ | クエルリッチ、 クエルゴールド |
ケルセチン | 抗酸化性、抗炎症作用 | 油を添加した加熱調理品 |
ゴマ | ごまぞう、まるえもん、 まるひめ |
ゴマリグナン (セサミン、セサモリン) |
抗酸化性 | ごま油、加工食品 |
ダッタンソバ (実,葉) |
満天きらり | ルチン | 抗酸化性、血管強化 | そば、そば茶 |
茶 | べにふうき | メチル化カテキン | 抗アレルギー、 血圧上昇抑制、 脂質代謝改善 |
緑茶、加工食品、 外用剤 |
サンルージュ | アントシアニン | 抗酸化性、眼精疲労抑制 | 緑茶、加工食品 | |
カンキツ | 西南のひかり、津之輝、 たまみ |
βクリプトキサンチン | 骨密度増加、メタボ抑制 | 生食、飲料 |
イチゴ | おいCベリー | ビタミンC | 抗酸化性、 コラーゲン合成促進、 メラニン色素生成抑制、 銅・鉄の吸収促進、 免疫賦活 |
生食 |
ヤーコン | アンデスの雪、 サラダオカメ |
フラクトオリゴ糖 | 腸内細菌増殖 | 生食 |
以下に、2例の機能性農作物の製品開発事例をあげてみたいと思います。
それぞれの事例では作用機作なども含めて科学的根拠が明らかにされていること(用量も含めて)が特徴であり、機能性を訴求するためには農作物であってもしっかりとしたエビデンスが必要であるといえます。
最初は、ミカンの事例です。2003年度から浜松市(旧三ヶ日町と合同で行ってきた栄養疫学調査(「三ヶ日町研究」)で、ウンシュウミカンなどの果物や野菜に含まれるカロテノイド類と健康状態との関連を経時的に調査しました。その中で、ウンシュウミカンをよく食べ(β-クリプトキサンチンで1日3-4mg)、閉経女性での骨粗鬆症のリスク2)、アルコール飲用者でのγ-GPT値の上昇リスク3)、血中のβ-クリプトキサンチン濃度の高い人では動脈硬化のリスク4)、喫煙者におけるメタボのリスク5)、インスリン抵抗性のリスク6)、が低いことが明らかにされました。これらの成果を活用して、飲料メーカーから、β-クリプトキサンチンをウンシュウミカン3個分含んだ飲料が上市されました。
次は高カテキン緑茶の事例です。高カテキン茶としては、紅茶系・半発酵茶系茶品種として開発された「べにふうき」(通常の緑茶品種に比べ茶葉中の総カテキン量が1.5-2倍高い品種7)です)を用いています。アレルギー鼻炎有症(花粉症、通年性アレルギー性鼻炎)者にメチル化カテキン(EGCG3”Me;抗アレルギー作用を持つ茶葉中物質)を多く含有する「べにふうき」緑茶(1日あたり34mg以上)とメチル化カテキンを含まない「やぶきた」緑茶を3ヶ月飲用させたところ、「べにふうき」緑茶で有意に目や鼻の症状の悪化が抑制されました8)。メチル化カテキンの作用としては、アレルギーで主要に働くマスト細胞内のチロシンキナーゼ(Lyn)リン酸化阻害9)、カテキンレセプタである67LRを介した高親和性IgEレセプタ発現抑制10)やミオシン軽鎖リン酸化阻害11)が認められており、それらの作用により、脱顆粒(ヒスタミン遊離)が抑制されると考察しています。
これらの知見を応用した利用製品開発が行われ、2006年から容器詰め飲料、菓子、健康食品が発売されました。2007年以降にも新たな製品開発が行われ、ベビーパウダー、入浴剤、ボディソープ、ベビー沐浴剤、インスタントティ、濃縮粒、ローションティッシュなどが上市され、現在も新製品開発が続いています(写真2)。
2 機能性農林水産物・食品開発プロジェクト
平成25年度から農研機構主体の機能性農林水産物・食品開発プロジェクトが実施されています12)。 このプロジェクトでは、独立行政法人、公設試験研究機関、大学、民間企業等との連携により、健康上のリスク低減等に効果が期待される農林水産物やその加工品の開発及びそれらの生産・流通技術の確立を行うとともに、医療機関等との連携により、農林水産物やその加工品について、疾病リスク低減への影響評価や、栄養・健康機能性、安全性、特性情報等を盛り込んだ農林水産物データベースの構築、個人の健康状態に応じたテーラーメイドな提供システム・栄養指導システムの開発を行うことになっています。以下がその概要です。
1)独立行政法人、公設試験場、大学、民間企業等との連携により、健康上のリスク低減等に効果が期待される農林水産物やその加工品の開発及びそれらの生産・流通技術の確立を行う。
2)農林水産物やその加工品を対象として、今後活用が有望と考えられる新たな健康機能性に関する基礎的研究を行う。例えば、日常のストレスを軽減する効果のある農林水産物やその加工品の開発、丈夫な体を作る効果のある農林水産物やその加工品の開発、今までにはない新しい機能性評価手法や機能性成分分析法の開発などを行う。
3)医療機関等との連携により、上記で開発された農林水産物やその加工品について、健康への影響評価や個人の健康状態に応じたテーラーメイドな供給システムの開発を行う。この中には、収集された情報の有効活用を図るため、機能性を持つ農林水産物及びその加工品の評価情報(機能性を持つ農林水産物の主な栄養・機能性情報、産地・栽培方法・調理等加工特性・機能性成分の含有量(分析法も含まれる)・機能性成分の生体利用性等の特性情報、エビデンスに関する文献情報(有効性判定)、安全性に関する情報、参考情報など)を収載した「健康に寄与する農林水産物データベース」の構築、地域において栄養指導を実施する栄養ケアステーションを設置し、管理栄養士が個人の健康状態と食生活を簡易に診断し、機能性農林水産物・食品を使用したレシピ開発などを行うとともに、機能性農林水産物・食品を活用して生活習慣病の予防や栄養改善に資する食生活を提案するシステムの構築などが含まれる。
プロジェクト最終年度の平成27年度には、健康維持・増進に寄与する「機能性弁当」や「機能性レシピ」などを作って流通したいと考えています(図1)。本プロジェクトでは、特にエビデンスに基づく機能性農林水産物の開発を目指しており、今回、ヒト介入試験(無作為割付プラセボ対照群間比較試験)を行って、効果を検証しようとしている農作物は、高アミロース米、アミロペクチンロングチェーン米、表面加工玄米、β-グルカン高含有大麦、全粒小麦、高タンパク大豆、ルチン高含有ダッタンソバ、高リコピンニンジン、高ルテインケール、ゴーヤ、ケルセチン高含有タマネギ、β-クリプトキサンチン高含有カンキツ、高カテキン緑茶です(表2)。
現在、種苗会社などでも様々な機能性野菜が育成されており、高リコピントマトなどが市場に出回っています。今までは、栄養成分などがリッチな農産物ということで売られてきており、トマトなどは種類も非常に増えてきました。このような機能性農産物の表示をどうするのか、ということを次に述べたいと思います。
表2.機能性農林水産物の開発に関する課題一覧 [表を拡大して見る]
新たな機能性表示制度について
2013年1月から発足した規制改革会議の中で、機能性を有する食品について、栄養機能食品については対象成分が限定されていること、特定保健用食品については、食品ごとに安全性や有効性にかかるヒト試験が必須であるとともに、許可手続に時間と費用がかかるため、中小企業にとってハードルが高いことなど、現行制度についての課題が指摘されました。そこで、規制改革実施計画(2013年6月14日閣議決定)13)では、「食の有する健康増進機能の活用」として、いわゆる健康食品等の加工食品及び農林水産物に関し、企業等の責任において科学的根拠をもとに機能性を表示できる新たな方策について、H25年度中に検討を開始し、H26年度中に結論を得た上で実施すると記載されました。そして、以下の事項が重要なポイントとして最初に挙げられました。
- 検討に当たっては、国ではなく企業等が自らその科学的根拠を評価した上でその旨及び機能を表示できる米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考にしつつ、安全性の確保も含めた運用が可能な仕組みとすることを念頭に行う。
- 食の有する健康増進機能の解明・評価や、健康増進機能を有する食材・食品の開発・普及促進を図る。さらに、健康・疾病データベースなど、世界最先端の研究・分析基盤を確立すること等により、こうした市場・産業の拡大・発展を図る。
それを受けて、「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」14)が消費者庁に設置され、第1回(2013年12月20日)~第8回(2014年7月18日)にわたって審議されました。検討会では、2015年4月の新制度開始を目指して、特定保健用食品、栄養機能食品ではない新たな機能性食品として、新制度に係る安全性確保の在り方、新制度に基づく機能性表示に必要な科学的根拠の考え方、消費者にとって誤認のない機能性表示の在り方、食品表示制度としての国の関与の在り方について討議されました。
1 安全性に関する議論
第4回検討会までは、安全性の確保についての議論が行われました。
内容としては、
- 対象となる食品及び成分の考え方並びに摂取量の在り方(①機能性関与成分を中心とする機能性を表示する食品の安全性について事業者が自ら評価、②評価結果等の情報開示)、
- 生産・製造及び品質の管理(①機能性を表示する食品の品質管理の実効性を担保するための製品分析の実施、②機能性を表示する食品の生産・製造及び品質の管理の方法についての情報開示)、
- 健康被害等の情報収集・危険な商品の流通防止措置等(①機能性の表示する食品に関する企業等による健康被害等情報収集体制等を整備、②行政における健康被害等の情報収集・解析の研究所推進等)でした。
特に、議論が活発だったのは、対象となる機能性関与成分についてであり、定性的、定量的に分析可能な成分であることとされました。また、健康被害情報の収集法についての議論も活発に行われました。以下に検討事項の要点を示します。
(消費者庁新しい機能性表示制度検討会資料より)15)
健康被害の未然防止を図ることを前提とした上で、機能性を表示する食品を販売する企業等による健康被害等の情報収集体制等の整備を図るとともに、行政における健康被害等の情報収集・解析手法の研究の推進等を実施することが必要ということで、以下のような健康食品の健康被害に関する消費者からの情報収集・流通防止のスキームも整備することとなりました。
2 機能性表示に関する議論
機能性表示に関する討議は第5回検討会から開始され、機能性表示の対応方針案と農林水産省から生鮮食品の機能性表示例が示されました。
第7回検討会までに修正された対応方針案の基本方針では、
- 栄養機能食品制度及び特定保健用食品制度は、それぞれ存置する、
- 新制度における機能性表示は、国ではなく企業等の責任によって行われるものであるため、栄養機能食品及び特定保健用食品とは別の制度とする、
- 新制度においては、表示しようとする機能性について、最終製品を用いたヒト試験による実証もしくは、適切な研究レビューによる実証を行うことを必須とする、
- 複数の保健機能成分についてそれぞれ機能性を表示しようとする場合は、成分ごとに機能性を実証すればよいこととする、
- 企業による品質担保、機能性表示にかかる科学的評価等については、実効性を担保するためのモニタリングの実施、違反した場合の国の措置等が必要である、
- バランスの取れた食生活の普及啓発、食品の機能性表示に関する消費者の理解増進に向けた取組も継続的に実施する、ことが示されました。
また、対象食品は、食品全般(アルコール飲料、ナトリウムや糖を過剰に摂取させる食品、食事摂取基準のある食品は対象外)、対象成分は、直接的又は間接的に定量可能な成分で、作用機作が考察されるものであり、登録検査機関等で成分分析を行うこと、対象者は、生活習慣病等の疾病に“罹患する前の人”又は“境界線上の人で、未成年者、妊産婦、授乳婦は訴求の対象としないこと、可能な機能性表示の範囲としては、健康維持・増進に関する表現とされました。特定保健用食品と異なるところでは、主観的な指標によってのみ評価可能な機能の表示についても新制度の対象となり得るとしたところであり、このことにより表示できる機能性(疲れ、睡眠、免疫など)の幅も広がると予想されます。 機能性表示にかかる科学的根拠レベルとしては、
- 最終製品を用いたヒト試験による実証(UMIN事前登録が行われ、CONSORT声明に準拠した形式で査読付きの論文で報告されていること)、
- 適切な研究レビューによる実証(査読付きの学術論文等、広く入手可能な文献(一次研究)を用いたシステマティック・レビュー(SR)を必須とし、機能性表示をしようとする保健機能成分の機能について、Totality of Evidenceの観点から肯定的といえるかどうか評価を行うこと)
のどちらかが必要で、サプリメント形状の食品では、ヒト介入試験で肯定的結果が得られていること、生鮮食品や加工食品では、ヒト介入試験か観察研究で肯定的結果得られていることが必要とされました。以下にその第7回検討会資料を示します。
(第7回検討会資料より)16)
また、表示の内容に関しては、第5回検討会で、農林水産省から生鮮食品及び加工食品に関して具体的な機能性表示の例が提出され、第7回検討会まで、機能性表示の範囲に関する議論が活発に行われました。特に、どのような表現、特に部位表示は認められるのかという点です。複数の委員から機能性表示の表現について、具体的な事例を示して欲しいと強い要望、意見が出されたのですが、消費者庁や厚労省からの具体的な言及はありませんでした。以下に農林水産省及び大谷委員から提出された機能性表示例を示します。
3 検討会報告書
検討会最終回となる第8回委員会では検討会報告書(案)が提示され、検討会終了後に報告書18)がHP上で公開されました。第1回~7回で検討されてきた内容が落とし込まれたものですが、特に、可能な機能性表示の範囲が新たに付け加えられました。
そこには、「生活習慣病等の疾病に罹患する前の人又は境界線上の人を対象とし、疾病に既に罹患している人(医師のもとで医薬品等により治療されるべき人)、未成年者、妊産婦(妊娠計画中の者を含む。)及び授乳婦に訴求するような製品開発、販売促進等は行わないこととすることが適当である。これらの対象者に関する健康維持・増進に関する表現とすることが適当である。また、厚生労働省より、この範囲内であれば、身体の特定の部位に言及した表現のみをもって、ただちに医薬品に該当するとは判断しないと示されたことを踏まえ、身体の特定の部位に言及した表現を行うことも可能とすることが適当である。ただし、疾病の治療効果又は予防効果を暗示する表現や、「肉体改造」等の健康の維持・増進の範囲を超えた、意図的な健康の増強を標ぼうするものと認められる表現は、医薬品として薬事法(昭和35年法律第145号)の規制対象となることに留意すべきである。疾病の治療又は予防を目的とする表示、疾病リスク低減表示をはじめとした疾病名を含む表示については、診療機会の逸失等を招く可能性があり、国の管理下(医薬品、特定保健用食品)で慎重に取り扱われるべきであるため、対象としないことが適当である。」と書かれています。
このように、未病者までの健康・維持増進に関する機能性で、部位表示も可能という見解が示されました。しかし、今回は事業者が責任を持って自主的に機能性表示を行うものであり、事前届け出制と言っても以下に示したような届出項目を満たしているかを確認するだけになります。販売後、薬事法(無承認無許可医薬品)、景品表示法(優良誤認、有利誤認)、健康増進法(虚偽誇大広告)に抵触したとして収去等となった場合は、特に新制度では生鮮食品を生産する農業者なども事業者として想定されることから、その波及効果は大変大きいと考えられます。そのため、そのような表現上でのトラブルを避けるために、事業者に対する詳細なガイドラインやQ&Aなどをできるだけ早く消費者庁が関係省庁と協力して作成するよう、検討会委員から強く求められました。
さらに、報告書案添付の参考資料では、安全性に関わる消費者庁への届出項目として、(1)摂取上の注意(医薬品等との飲み合わせ、過剰摂取を防止するための注意喚起等)、(2)機能性関与成分及び安全性に関わる成分の量に関する規格、(3)食経験に関する情報、(4)安全性試験に関する情報(食経験に関する情報では安全性を十分に説明できない場合)、(5)機能性関与成分と医薬品との相互作用の有無、(6)成分同士の相互作用の有無(機能性関与成分を複数含む場合)、(7)機能性関与成分及び安全性に関わる成分の量に関する規格(分析法、規格値、限度値等)、(8)HACCP、ISO 22000、FSSC 22000、GMP等の取組状況、(9)施設や作業員の衛生管理体制、(10)異物混入や他製品との混同の防止体制、(11)製品の均質性とその管理体制(生鮮食品については、産地、品種、収穫時期等)、(12)規格外製品の出荷防止体制、(13)製造・品質等の記録文書やサンプルの保管体制、(13)原料の基原の保証試験の方法及び製品の崩壊性試験の結果並びに当該試験の頻度(当該食品のみ)、(14)健康被害等の情報収集体制がイメージとして示されました。
また、機能性に関わる届出項目としては、(1)機能性表示の内容、(2)機能性の根拠情報(臨床試験又は研究レビューの内容、(3)(該当する場合のみ)最終製品による臨床試験は行われていない等、対応されていない事項に関する情報がイメージとして示されました。
容器包装へ表示しなければいけない主要項目のイメージとしては、事業者名、消費者対応部局の連絡先、製品名、届出受理番号、機能性関与成分名、1日摂取目安量、1日摂取目安量当たりの機能性関与成分の含有量、摂取の方法、栄養成分の量及び熱量、摂取上の注意、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではない旨、国が評価をした商品ではない旨、医薬品を服用している者は医師、薬剤師に相談した上で摂取すべき旨、体調に異常を感じた際は速やかに摂取を中止し医師に相談すべき旨、機能性表示の内容、機能性及び安全性について、国による評価を受けたものではない旨、疾病に既に罹患している人、未成年者、妊産婦(妊娠計画中の者を含む。)及び授乳婦を対象として開発したものではない旨(生鮮食品を除く)、バランスのとれた食生活の普及啓発を図る文言、が挙げられています。また、これらの項目は、8月28日から始められた説明会で示された食品表示基準(案)19)にも改正案として盛り込まれており、その中では、さらに、「疾病に罹患している場合は医師に相談する旨」が付け加えられています。また、栄養機能食品との併用や特定保健用食品との併用表記は認めないとしています。
4 今後の動き
今後は、消費者委員会での検討などを経て、運用を含めた制度の内容が固まっていくとされていますが、パブリックコメントの募集がスタートし(8月28日~9月26日)、全国各地での説明会(8月28日~9月4日)が開催されました。個別の機能性表示の表現に関しては、販売後の収去などを避けるため、具体的な内容を示したガイドラインやQ&A集が整備されることが強く求められます。生鮮食品においては、機能性成分のばらつき(収穫、出荷、輸送、貯蔵などの各工程別)をどのように押さえるのかが鍵となり、それがそれぞれの産地や事業所でのノウハウとなってくると考えられます。これについては、説明会で消費者庁から回答があったように、農林水産省と連携してガイドラインを整備することとなるようです。届出文書の形式的な確認や薬事法に抵触しないかの確認が済んだ商品に届出受理番号が付されてから60日後に販売が始まるようですので、来年6月には、消費者の健康維持増進に寄与する、生鮮食品を含めた新たな機能性表示食品が世に出てくるものと考えられます。
おわりに
今後、農林水産物に含有される特定の機能性成分が有する生体調節作用に関して、ヒトレベルでの有効性の検証及び機能性成分を多く含む品種の育成、最適な加工・調理法の開発などを行っていく必要があります。農林水産物の場合は、機能性関与成分のばらつきをできるだけ少なくするような品質管理システムの開発が重要となってくると思われます。種苗に関してもしっかりとした知財管理が必要になってくるでしょう。
民間企業で育成が加速化している機能性野菜等農産物に関しては、抗酸化能の評価が重要になるものと思われます。特に妥当性が確認された測定方法が必要となり、標準化されたORAC法や標準化の進むSOAC法などは使用が広がるでしょう。さらに、機能性農産物の付加価値を高め、健康維持増進に活かしていくためには、機能性農産物の生体への効果の検証研究やそれを基にした機能性表示についても実施して行く必要があります。
また、今後は、単に三次機能やその有効成分だけの研究を行うのではなく、栄養成分、嗜好成分についても同時に考慮した栄養・健康機能を総合的に考えた農林水産物・食品の開発が重要であると考えています。できるだけ多くの、エビデンスがしっかりと検証された農林水産物が世に出され、国民の健康維持に寄与することを期待しています。
(2014年10月)
参考資料
1)http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/kind-pamph/025205.html
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/hinshu2014.pdf
2) M. Sugiura et al.(2012) PLOS ONE,7(12):e52643
3) M. Sugiura et al.(2005) J Epidemiol, 15:180-186
4) M. Nakamura et al.(2006) Atherosclerosis, 184: 363-369
5) M. Sugiura et al. (2008) Br J Nutr, 100: 1297-1306
6) M. Sugiura et al. (2006) J Epidemiol, 16: 71-78
7) M. Maeda-Yamamoto et al. (2012) J Agric Food Chem, 60:2165-2170
8) M. Masuda et al. (2014) Allergol Int., 63:211-217
9) M. Maeda-Yamamoto et al. (2004) J. Immunology, 172:4486-4492
10) Y. Fujimura et al. (2002) J. Agric. Food Chem, 50: 5729-5734
11) Y. Fujimura et al.(2007) Biochem Biophys Res Commun, 364: 79-85
12) http://www.naro.affrc.go.jp/project/f_foodpro/index.html
13) http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/publication/130614/item1.pdf#search='%E8%A6%8F%E5%
88%B6%E6%94%B9%E9%9D%A9%E5%AE%9F%E6%96%BD%E8%A8%88%E7%94%BB'
14) http://www.caa.go.jp/foods/index19.html
15) http://www.caa.go.jp/foods/pdf/140502_sanko_1.pdf
16) http://www.caa.go.jp/foods/pdf/140626_shiryo_1.pdf
17) http://www.caa.go.jp/foods/pdf/140626_sanko_2.pdf
18) http://www.caa.go.jp/foods/pdf/140730_2.pdf
19) http://www.caa.go.jp/foods/pdf/140828_kijun.pdf