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学術コラム

掲載日2023年9月13日

 最近、論文数が急激に増え、メディアへの露出も多く、何かと話題の「時間栄養学」*。ただ、実生活や商品開発に取り入れようとすると難しいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 そこで、今回は日本時間栄養学会理事であり、広島大学大学院准教授の田原優先生に、生活者が感じている健康課題に対する、時間栄養学的アプローチについてお話を伺いました。

*「時間栄養学」
 体内時計のリズムに合わせて栄養学を考える学問です。
 詳しくはこちら ▶https://www.taiyokagaku.com/lab/column/38_1/

最初にお知らせ

2023年日本時間栄養学会学術大会にて、東京工業大学・広島大学・弊社ら共同研究チームによる、グアーガム分解物のセカンドミール効果*の研究発表を行いました。
プレスリリースは こちら

*セカンドミール効果
あらかじめ血糖値の上昇を緩やかにする食事を摂ると、その後の食事での急激な血糖値の上昇が抑えられること。

*セカンドミール効果
あらかじめ血糖値の上昇を緩やかにする食事を摂ると、その後の食事での急激な血糖値の上昇が抑えられること。

ダイエットに効果的な時間栄養学を知りたい!

太ると分かっていても、寝る前のおやつがやめられません。夜におやつを食べる時の注意点はありますか?

 夜食は昔から太るとは言われていますし、食べないほうが望ましいと思います。しかし、寝る前のおやつがやめられないのも、体内時計の仕業です。どうしても食べるのであれば、せめて糖質や脂質が少ないもの、または糖の吸収を抑える食物繊維を含むものがいいでしょう。
 また、夜食は体内時計の夜型化を引き起こします。糖質やカフェインは、体内時計をより遅らせるので、摂取は控えましょう。

甘いものや揚げ物が好きですが痩せたいです。
ダイエットのために取り入れやすい時間栄養学はありますか?

 1日の全ての食事を8~10時間以内に済ませるようにして、毎日14-16時間、食べない時間をつくりましょう。食べる時間に注目されがちですが、海外では絶食時間と健康効果についての研究の方が進んでいます。
 甘いものや揚げ物を食べても良いですが、なるべく1日の前半に食べるようにして、夜の時間帯は少なくすることが好ましいです。

夜にお腹が空いたときは、空腹のままよりも、何か食べてから寝たほうがよく眠れたりしませんか?

 確かに空腹を原因とした低血糖などで中途覚醒してしまうよりは、ある程度夜食を食べて寝る方が良いかもしれませんね。ただ、食べる時間が遅いとその後の血糖値は急上昇しますし、体内時計への影響や朝起きたときの空腹感への影響が気になるところです。
 また、血糖値が上がりやすい夕食は、血糖値の上がりづらい食物繊維が多い食事に比べ、その後すぐに眠りを誘いますが、睡眠の質を下げることが報告されています。炭水化物、脂質が少なめでタンパク質の比率が多い食事を摂っている人の方が、睡眠時間が長く、睡眠の質もいいという報告もあります。
 しかし、夜食そのものをしっかりと介入試験で評価した研究は無く、今後の研究に期待したいです。

その他、ダイエットの参考になる情報をお教えください!

 朝食前の運動は、朝の空腹時に使える糖が無いので、エネルギー源として脂質が使われ、ダイエットに効果的ではないか、というデータがあります。一方で、一般的に、午前よりも午後の方が運動パフォーマンスは高く、脂肪燃焼効果も午後の方がいいという意見もあります。

疲労・睡眠に効果的な時間栄養学を知りたい!

残業が多く、夜ご飯が遅くなるためか、夜になかなか寝付けず、朝も疲れがとれません。
仕事の時間をずらす事ができないのですが、それでも取り入れられる時間栄養学はありますか?

 夜遅い時間に食事を食べ過ぎることは好ましくないので、夕方くらいに手軽に摂れる食品で分食を考えてはいかがでしょうか。おにぎりやパン、プロテインバーやパウチゼリーなど、手軽にとれる食品が身近に多くありませんか。
 朝、昼にしっかり食べることも有効かと思います。

午後になると眠気が出て、スッキリしません。午後もしっかり頑張るための方法はありますか?

 15分程度の昼寝ができるのであれば、ぜひお試しいただきたいです。
 コーヒーナップという言葉はご存知ですか?長時間寝すぎないようにコーヒーを飲んでカフェインを摂取してから寝ましょう、という考え方です。昼寝をする時間が取れない方も多くいらっしゃると思いますが、日常の睡眠時間が足りないと、どうしても眠気がありますので、生活を見直すこともお勧めします。

朝の寝起きが悪く、すぐに動けません。朝食で食べると体が温まって動けるような食事はありますか。

 若い女性に多い起立性障害かもしれません。自律神経の調節の乱れが主な原因ですが、生活リズムの乱れによることが多いです。規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠を取ることが大事です。女性の場合は、貧血の可能性もありますので、鉄分の補給も大事です。
 また、朝ごはんを抜かないことが大事です。体温を上げるためにも「何を食べるか」以上に、「何か食べる」ことを重視しましょう!

美容に効果的な時間栄養学を知りたい!

食物繊維は腸内環境を整えて、肌の調子が良くなるイメージがあります。
摂取に適したタイミングはありますか?

 学術コラムにも書きましたが、食物繊維は朝昼晩それぞれに意味があり、3食毎日食べてほしい栄養素です。朝に食物繊維を摂取すると、体内時計調節の効果があります。また、朝と夕方の食物繊維摂取を比較した研究では、朝に摂取した場合で、より1日を通して血糖値が低く、腸内発酵も進み、便通が改善していたという研究があります。また、夜は食後血糖値が1日の中で一番上がりやすいので、セカンドミール効果と、急性の糖の吸収抑制効果を期待して、お昼や間食、夕食時にも食物繊維を摂ることをおすすめします。
 そもそも食物繊維の摂取が足りていない人が多いので、腸内環境を良くするためにも毎日継続して摂取を心がけることが大事だと思います。

美容に効果的なビタミン(V.C、V.Bなど)は種類によって摂取する時間を変えたほうがよいものがありますか?

 水溶性のビタミンは、摂りすぎても排出されるため、あまり摂取するタイミングは関係ないのかもしれません。むしろ3食しっかりとった方が良いと思います。
 脂溶性ビタミンは、もしかしたら効果的な吸収タイミングがあるかもしれないです。トマトのリコピンやDHA、EPAといった脂溶性成分は朝の方が吸収が良い、という研究もあります。
 もちろんファスティングにより、体内の栄養素が減っていれば、吸収も高まります。

スポーツに効果的な時間栄養学を知りたい!

時間栄養学を取り入れると同じ食事を摂っても、運動のパフォーマンスが変わったりするのでしょうか?

 朝食を食べないと朝の体温が上がらず副交感神経優位になり、午前中のパフォーマンスが落ちる、ということは昔から知られています。
 ただ、運動のパフォーマンスと食事の関係はこれからです。時間栄養学や時間運動学の進展にご期待ください。

筋トレで身体を鍛えるが趣味なのですが、マッチョになるためのアドバイスをお願いします!

 筋肉量が落ちる筋委縮の予防に関して、夕方よりも朝の運動が効果的であったという動物実験の研究があります。よって、高齢者のサルコペニア予防には、朝運動した方が良いのではないでしょうか。ただ、それ以上に筋肉を増やそうという考えでしたら、あまりエビデンスは無いと思います。
 一方で、筋肉を肥大させる実験では、朝と夜なら、朝にタンパク質を摂取した方が筋肉がより大きくなった、という動物実験もあります。一般的に、朝は昼や夜に比べ、タンパク質摂取量が少ないため、朝に意識してタンパク質を摂ることがサルコペニア予防に効果的です。実際に、高齢者で朝にタンパク質を多く摂取していた方は、夜に多く摂取していた方に比べ、握力や骨格筋指数が高い傾向にありました。
 マッチョになるための研究はまだこれからですが、朝タンパク+朝筋トレで、効果的に筋肉をつけられる可能性はあるでしょう。

他にも効果的な時間栄養学を知りたい!

晩酌が楽しみでどうしてもやめられません。
時間栄養学的におすすめのお酒を飲むタイミングや食べ合わせはありますか?

 「寝酒は良くない」というのは昔から言われていますが、お酒を飲んで寝てしまうと中途覚醒が増えて目が覚めてしまいます。寝酒で入眠はしやすくなるかもしれませんが、お勧めしません。夕食時に飲んでそのあと就寝まで2~3時間は空けておく方が良いと思います。
 それと、アルコールは朝の光による体内時計リセット効果を阻害します。よって、飲み過ぎはよくありません。

夜勤が続くと、日勤の時と食べる量は変わっていないのに、太ってしまいました。
食事量以外で何に気を付けたら良いですか?

 夜遅い食事は血糖値が上がりやすく、また脂肪の蓄積も起こりやすいタイミングです。夜勤の方の食習慣を調べた研究では、夜勤前や夜勤中は食堂でどんぶりやラーメンを頼みがちのようです。夜は無意識のうちにバランスの悪い食事や甘いモノを食べたくなりがちなので、ヘルシーなモノを意識して食べるように心がけることが大事です。
 どんぶりもの等は、昼間のような普段起きているべき時間に食べたり、もしくは早い時間に夕食として食べておいて夜勤前は少し軽めの食事にしたりといった工夫を意識的に行いましょう。

最後に

田原先生ありがとうございました!
みなさまも是非生活に時間栄養学を取り入れてみましょう!

※このコラムは、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、あらかじめご了承ください。

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